我が国の甲状腺外科, 最近の話題

バセドウ病や単純性甲状腺腫(地方病性)の外科治療を中心に展開してきた甲状腺の外科は, 科学の進歩に伴つて大きく転換し, 今日, 世界的にみて, 甲状腺機能を対象とする外科は斜陽の立場にあり, 腫瘍とくに癌の外科が主流となつている. 最近の我が国における甲状腺外科は, 毎年開催される甲状腺外科検討会を中心に発展を続けている. この会で討議された主題も, 世界の流れと同様に癌が主であるが, バセドウ病の外科も, 数は少ないが2回ある. これは欧米と異なり, 我が国の手術成績が他の治療法より優れていること, 治療期間が短いことなどの利点があるためである. 急性化膿性甲状腺炎はまれで, 感染ルートは長...

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Published in医療 Vol. 41; no. 9; pp. 765 - 771
Main Author 牧内, 正夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1987
国立医療学会
Subjects
バセドウ病
急性化膿性甲状腺炎
甲状腺微小癌
甲状腺未分化癌
転移性甲状腺腫
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.41.765

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Abstract バセドウ病や単純性甲状腺腫(地方病性)の外科治療を中心に展開してきた甲状腺の外科は, 科学の進歩に伴つて大きく転換し, 今日, 世界的にみて, 甲状腺機能を対象とする外科は斜陽の立場にあり, 腫瘍とくに癌の外科が主流となつている. 最近の我が国における甲状腺外科は, 毎年開催される甲状腺外科検討会を中心に発展を続けている. この会で討議された主題も, 世界の流れと同様に癌が主であるが, バセドウ病の外科も, 数は少ないが2回ある. これは欧米と異なり, 我が国の手術成績が他の治療法より優れていること, 治療期間が短いことなどの利点があるためである. 急性化膿性甲状腺炎はまれで, 感染ルートは長い間不明であつたが, 最近, 下咽頭梨状窩瘻の存在が話題になつており, 紹介した. 甲状腺癌は, 組織型によつて, 生物学的性格が著しく異なるために, 治療方針の決定にはきめの細かい配慮が必要である. 発育の緩徐な分化癌, 極めて悪性度の高い未分化癌, カルシトニン分泌, 家族発生など特異な臨床像を示す髄様癌など, 癌に関する話題は数多く, 豊富である. この中から, 未分化癌の未分化化(anaplastic transformation), 転移性甲状腺腫, および微小癌をとり上げて現状を紹介した.
AbstractList 「要旨」バセドウ病や単純性甲状腺腫(地方病性)の外科治療を中心に展開してきた甲状腺の外科は, 科学の進歩に伴つて大きく転換し, 今日, 世界的にみて, 甲状腺機能を対象とする外科は斜陽の立場にあり, 腫瘍とくに癌の外科が主流となつている. 最近の我が国における甲状腺外科は, 毎年開催される甲状腺外科検討会を中心に発展を続けている. この会で討議された主題も, 世界の流れと同様に癌が主であるが, バセドウ病の外科も, 数は少ないが2回ある. これは欧米と異なり, 我が国の手術成績が他の治療法より優れていること, 治療期間が短いことなどの利点があるためである. 急性化膿性甲状腺炎はまれで, 感染ルートは長い間不明であつたが, 最近, 下咽頭梨状窩瘻の存在が話題になつており, 紹介した. 甲状腺癌は, 組織型によつて, 生物学的性格が著しく異なるために, 治療方針の決定にはきめの細かい配慮が必要である. 発育の緩徐な分化癌, 極めて悪性度の高い未分化癌, カルシトニン分泌, 家族発生など特異な臨床像を示す髄様癌など, 癌に関する話題は数多く, 豊富である. この中から, 未分化癌の未分化化(anaplastic transformation), 転移性甲状腺腫, および微小癌をとり上げて現状を紹介した.
バセドウ病や単純性甲状腺腫(地方病性)の外科治療を中心に展開してきた甲状腺の外科は, 科学の進歩に伴つて大きく転換し, 今日, 世界的にみて, 甲状腺機能を対象とする外科は斜陽の立場にあり, 腫瘍とくに癌の外科が主流となつている. 最近の我が国における甲状腺外科は, 毎年開催される甲状腺外科検討会を中心に発展を続けている. この会で討議された主題も, 世界の流れと同様に癌が主であるが, バセドウ病の外科も, 数は少ないが2回ある. これは欧米と異なり, 我が国の手術成績が他の治療法より優れていること, 治療期間が短いことなどの利点があるためである. 急性化膿性甲状腺炎はまれで, 感染ルートは長い間不明であつたが, 最近, 下咽頭梨状窩瘻の存在が話題になつており, 紹介した. 甲状腺癌は, 組織型によつて, 生物学的性格が著しく異なるために, 治療方針の決定にはきめの細かい配慮が必要である. 発育の緩徐な分化癌, 極めて悪性度の高い未分化癌, カルシトニン分泌, 家族発生など特異な臨床像を示す髄様癌など, 癌に関する話題は数多く, 豊富である. この中から, 未分化癌の未分化化(anaplastic transformation), 転移性甲状腺腫, および微小癌をとり上げて現状を紹介した.
Author 牧内, 正夫
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References 3) Makiuchi, M. et al.: An evaluation of several prognostic factors in the surgical treatment for thyrotoxicosis. Surg. Gynec. & Obstet., 152, 639, 1981
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5) 鎮目和夫: 新内科学大系41巻内分泌II, 67. 中山書店, 東京, 1973
8) Takai, S. et al.: Internal fistula as a route of infection in acute suppurative thyroiditis. Lancet, 1, 751, 1979
14) 伴在隆, 牧内正夫他: 甲状腺腺腫の再検討, 第14回甲状腺外科検討会抄録集, 58. 1981
4) 牧内正夫他: 甲状腺機能亢進症の外科的治療. ホルモンと臨, 27, 1245, 1979
12) Harada, T. et al.: Fatal thyroid carcinoma, anaplastic transformation of adenocarcinoma. Cancer, 39, 2588, 1977
6) 尾形悦郎: バセドウ病の内科的治療. 内科 Mook, 2, 129, 1978
9) 金子源吾, 牧内正夫他: 経梨状窩瘻性急性化膿性甲状腺炎について. 日臨外会誌, 45, 590, 1984
17) 牧内正夫他:甲状腺微小癌.ホルモンと臨,32,727,1984
1) 降旗力男, 牧内正夫: 定型的手術手技 IV, 99, (日本外科学会教育委員会編). 中外医学社, 東京, 1981
13) 甲状腺外科検討会編: 甲状腺癌取扱い規約, 23. 金原出版, 東京, 1983
7) 小西淳二: 甲状腺機能亢進症のアイソトープ治療. 第20回日本医学会総会会誌, 1851, 1979
2) 降旗力男, 牧内正夫: 新臨床外科全書, 12巻, 内分泌外科, 65. (降旗力男編). 金原出版, 東京, 1977
16) 牧内正夫: 甲状腺分化癌の甲状腺切除に関する問題点. 手術, 35, 859, 1981
15) Senga, O., Makiuchi, M. et al.: Diagnostic value of 201Tl chloride scintigraphy for thyroid tumors. Jap. J. Clin. Oncol., 9, 225, 1979
References_xml – reference: 16) 牧内正夫: 甲状腺分化癌の甲状腺切除に関する問題点. 手術, 35, 859, 1981
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「要旨」バセドウ病や単純性甲状腺腫(地方病性)の外科治療を中心に展開してきた甲状腺の外科は, 科学の進歩に伴つて大きく転換し, 今日, 世界的にみて, 甲状腺機能を対象とする外科は斜陽の立場にあり, 腫瘍とくに癌の外科が主流となつている. 最近の我が国における甲状腺外科は,...
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