長野県中学校集団登山における疾病発生状況

「I 緒言」長野県のほとんどの中学校では夏季休暇前後に集団登山を実施しており, 各校の伝統行事となっている. その目的は, (1)自然とのふれあい, (2)規律ある集団行動の実践, (3)困難を乗り越える精神力の養成, などであり, 山小屋で1泊し2,500m以上の高山を目指す学校が多い. 信州大学医学部第1内科では30年程前より各校の要請に応じ, 学校保健師に付き添う形で同行医師を派遣してきた. 1989年中房温泉にて気管支喘息発作による死亡例が発生, 翌年には燕岳頂上付近で落石事故による死亡例が発生したことから, 中信地区を中心に医師同行の需要が飛躍的に高まった. 以降, 信州大学医学部附...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 56; no. 3; pp. 133 - 140
Main Authors 花岡正幸, 浅川俊, 西村良平, 川崎洋一郎, 漆畑一寿, 久保惠嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 2008
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ISSN0037-3826
DOI10.11441/shinshumedj.56.133

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Summary:「I 緒言」長野県のほとんどの中学校では夏季休暇前後に集団登山を実施しており, 各校の伝統行事となっている. その目的は, (1)自然とのふれあい, (2)規律ある集団行動の実践, (3)困難を乗り越える精神力の養成, などであり, 山小屋で1泊し2,500m以上の高山を目指す学校が多い. 信州大学医学部第1内科では30年程前より各校の要請に応じ, 学校保健師に付き添う形で同行医師を派遣してきた. 1989年中房温泉にて気管支喘息発作による死亡例が発生, 翌年には燕岳頂上付近で落石事故による死亡例が発生したことから, 中信地区を中心に医師同行の需要が飛躍的に高まった. 以降, 信州大学医学部附属病院は一貫して医師派遣に協力し, 長野県全体のデータではあるが看護師を含む医療従事者が同行する学校は, 1993年:13%, 1999年:22%, 2003年:54%と大幅に増加した1). 一方, 人間が海抜2,500m以上の高地環境に急速に曝露されると, 一部の個体は順応不全に陥り, 急性高山病(acute mountain sickness;AMS)を発症する2).
ISSN:0037-3826
DOI:10.11441/shinshumedj.56.133