水溶液中におけるダブシルアミノ酸の会合挙動

ダブシルクロリド(Dabs-Cl)は,高速液体クロマトグラフィーなどによるタンパク質分析の際のアミノ酸標識剤である.著者らは,Dabs-Clで標識された一連のダブシル化アミノ酸(Dabs-AA)を合成し,紫外可視吸収スペクトル及び円二色性(CD)スペクトルを測定し,Dabs-AAの水溶液中での会合挙動を検討した.希薄水溶液では,Dabs-AAの可視部の吸収はジメチルアミノアゾベンゼン色素特有のpH依存性を示す.Dabs-AAの濃度上昇に伴い,500 nm付近のDabs-AAのモノマー由来の吸収は減少し,360~400 nm領域にダイマーに由来するピークが観測される.ダイマーの形成は共溶媒として...

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Published in分析化学 Vol. 54; no. 9; pp. 799 - 805
Main Authors 細井, 信造, 国本, 浩喜, 桑江, 彰夫, 佐々木, 千鶴, 花井, 一彦, 林, 宏成, 前田, 史郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 01.01.2005
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.54.799

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Summary:ダブシルクロリド(Dabs-Cl)は,高速液体クロマトグラフィーなどによるタンパク質分析の際のアミノ酸標識剤である.著者らは,Dabs-Clで標識された一連のダブシル化アミノ酸(Dabs-AA)を合成し,紫外可視吸収スペクトル及び円二色性(CD)スペクトルを測定し,Dabs-AAの水溶液中での会合挙動を検討した.希薄水溶液では,Dabs-AAの可視部の吸収はジメチルアミノアゾベンゼン色素特有のpH依存性を示す.Dabs-AAの濃度上昇に伴い,500 nm付近のDabs-AAのモノマー由来の吸収は減少し,360~400 nm領域にダイマーに由来するピークが観測される.ダイマーの形成は共溶媒として用いたジメチルスルホキシド濃度,溶液温度及びアミノ酸側鎖(R)に依存する.Dabs-L-Pheの363 nmに観測されるダイマーの吸収帯に対応して,379 nmに負の第一コットン効果,359 nmに正の第二コットン効果をもつ強い誘起分裂型CDスペクトルが観測された.これらの結果から水溶液中では,Dabs-L-Pheは負のキラリティーを示す配向でダイマーを形成していることが示唆された.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.54.799