注意障害が脳卒中患者の車椅子移乗動作に与える影響
【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)における脳卒中患者のうち,約3割の患者が転倒を経験する.また,車椅子移動と転倒の関連性が報告されている.脳卒中患者の車椅子移乗動作の自立を,身体機能や注意障害などの高次脳機能障害の影響を踏まえて判断しているが,車椅子移乗動作と注意障害との関連性に関する報告は少ない.注意障害が移乗動作の自立可否に与える影響を検証した.【対象・方法】対象は,2018年6月から2018年12月までに当院の回リハ病棟に入棟した脳卒中患者144名中,除外基準に該当した者を除き, 同意の得られた23名(脳出血10名,脳梗塞13名)とした.評価項目は,注意機能評価をB...
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Published in | Kyushu physical therapist Congress Vol. 2019; p. 48 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
2019
Kyushu Physical Therapy Association |
Subjects | |
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ISSN | 2434-3889 |
DOI | 10.32298/kyushupt.2019.0_48 |
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Summary: | 【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)における脳卒中患者のうち,約3割の患者が転倒を経験する.また,車椅子移動と転倒の関連性が報告されている.脳卒中患者の車椅子移乗動作の自立を,身体機能や注意障害などの高次脳機能障害の影響を踏まえて判断しているが,車椅子移乗動作と注意障害との関連性に関する報告は少ない.注意障害が移乗動作の自立可否に与える影響を検証した.【対象・方法】対象は,2018年6月から2018年12月までに当院の回リハ病棟に入棟した脳卒中患者144名中,除外基準に該当した者を除き, 同意の得られた23名(脳出血10名,脳梗塞13名)とした.評価項目は,注意機能評価をBehavioral Assessment of Attentional Disturbance(以下,BAAD),身体機能評価をStroke Impairment Assessment Scale(以下,SIAS)とし,入棟時と入棟後1ヶ月時に測定した.BAADは高得点な程、注意障害が重度となる.入棟後1ヶ月時のFunctional Independence Measure(以下,FIM)の移乗動作の得点で,自立群(6-7点)と非自立群(1-5点)の2群に分類した.各評価項目の結果を,移乗動作の自立可否(自立群、非自立群)と評価時期(入棟時、入棟後1ヶ月)を要因とし,二元配置分散分析を用いて分析した.有意水準は5%未満とした.【結果】1. BAADについてBAADの平均値は,入棟時(自立群:3.5点,非自立群:8.2点),入棟後1ヶ月時(自立群:0.9点,非自立群:7.0点)であった.二元配置分散分析の結果,自立可否と評価時期の間に交互作用は認められなかった.入棟時と入棟後1ヶ月時の自立可否において主効果が認められ ( p < 0.05 ) ,各時期におけるBAADの値は自立群に比べて非自立群が有意に高かった.また,自立群のみ評価時期の主効果が認められ ( p < 0.05 ) ,入棟後1ヶ月時のBAADの値は有意に改善していた.2. SIASについてSIASの平均値は,入棟時(自立群:55.4点,非自立群:40.2点),入棟後1ヶ月時(自立群:59.8点,非自立群:48.4点)であった.二元配置分散分析の結果,自立可否と評価時期の間に交互作用は認められなかった.入棟時の自立可否において主効果が認められ ( p < 0.05 ) ,SIASの値は自立群に比べて非自立群が有意に低かった.入棟後1ヶ月時においては主効果が認められず,2群間に有意な差は無かった.また,自立群,非自立群において評価時期の主効果が認められ ( p < 0.05 ) ,各群のSIASの値は入棟後1ヵ月時に有意に改善していた.【考察】身体機能は自立群、非自立群ともに改善していたが,注意機能の改善は自立群のみであった.豊倉らは,脳卒中患者の歩行自立群と監視群で注意障害の影響を検討しており,BAADの成績が自立群で良好であったと報告している.本研究の結果から,注意障害が改善した患者は移乗動作が自立しており,移乗動作の自立可否には注意障害が影響している可能性が示された. 【倫理的配慮,説明と同意】本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の臨床研究審査委員会の承認を得た.また,対象者,および家族には文書と口頭にて十分な説明を行い,同意を得た.(承認番号 JMC244-1836) 本研究において,開示すべき利益相反はない. |
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ISSN: | 2434-3889 |
DOI: | 10.32298/kyushupt.2019.0_48 |