支台築造歯の歯根破折のメカニズム

根管治療後の支台築造歯における歯根破折の原因について解説するとともに, 歯根破折を生じない築造体の設計について考察した. 支台築造用材料として従来用いられていた金属材料の物性を歯質と比較すると, 金属材料は強さ, 弾性係数ともに大きい. 大きな強さはポスト自体が破折しにくいことを表す. しかし, 大きな弾性係数は咬合時による負荷が歯根に伝達され, ポスト先端, 骨縁部の歯質, 被覆冠の辺縁部に応力が集中する. これらの部位での荷重の大きさはポストの長さ, 支持歯槽骨の高さ, 残存歯質の量で変化する. この応力が集中する部位の歯質の厚みが十分であれば歯根破折を防ぐことができる. また, 弾性係数...

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Published in日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 45; no. 6; pp. 669 - 678
Main Author 高橋, 英和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本補綴歯科学会 2001
日本補綴歯科学会
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ISSN0389-5386
1883-177X
DOI10.2186/jjps.45.669

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Summary:根管治療後の支台築造歯における歯根破折の原因について解説するとともに, 歯根破折を生じない築造体の設計について考察した. 支台築造用材料として従来用いられていた金属材料の物性を歯質と比較すると, 金属材料は強さ, 弾性係数ともに大きい. 大きな強さはポスト自体が破折しにくいことを表す. しかし, 大きな弾性係数は咬合時による負荷が歯根に伝達され, ポスト先端, 骨縁部の歯質, 被覆冠の辺縁部に応力が集中する. これらの部位での荷重の大きさはポストの長さ, 支持歯槽骨の高さ, 残存歯質の量で変化する. この応力が集中する部位の歯質の厚みが十分であれば歯根破折を防ぐことができる. また, 弾性係数が象牙質と類似した材料をポストに使用すると歯根部への負荷の伝達が減少するが, ポストの曲げ強さが要求される. 実際の破折様相は破折試験で検討されているが, 多くの破折試験は静的な荷重下での実験であり, 実験で得られた破折線は臨床で観察される様相と必ずしも一致していない. これは, 亀裂が咬合による繰返し負荷によって進展するためであり, 今後は破折実験に繰返し負荷を与えることが重要と思われる. 歯根破折を防ぐには支台築造歯の歯質をできるだけ削除しないことである. しかし, 歯根破折を起こさないような築造体の設計は築造体の脱落をきたしやすいことも同時に注意しなければならない.
ISSN:0389-5386
1883-177X
DOI:10.2186/jjps.45.669