末梢動脈閉塞症に対する骨髄単核球移植療法と血管内皮前駆細胞の定量的評価

従来, 成人における血管新生は, 既存の成熟血管内皮細胞の増殖と遊走によるものだけであるとされてきたが, 成人の末梢血中には, 血管内皮細胞(endothelial cell:EC)に分化しうる血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell:EPC)が存在することが明らかになった1). また種々の動物実験により, 成人の血管新生においても, 胎生期に見られるような血管発生型の血管新生(neovascularization)が関与している可能性が示唆された2)3). これらの血管内皮前駆細胞は骨髄より動員されると考えられており4)5), 実際に骨髄細胞移植によって虚血組...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 51; no. 5; pp. 537 - 542
Main Authors 小林, 昌義, 鈴木, 哲, 室原, 豊明, 山本, 晃士, 古森, 公浩, 高松, 純樹, 近藤, 隆久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2005
日本輸血学会
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ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.51.537

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Summary:従来, 成人における血管新生は, 既存の成熟血管内皮細胞の増殖と遊走によるものだけであるとされてきたが, 成人の末梢血中には, 血管内皮細胞(endothelial cell:EC)に分化しうる血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell:EPC)が存在することが明らかになった1). また種々の動物実験により, 成人の血管新生においても, 胎生期に見られるような血管発生型の血管新生(neovascularization)が関与している可能性が示唆された2)3). これらの血管内皮前駆細胞は骨髄より動員されると考えられており4)5), 実際に骨髄細胞移植によって虚血組織の血管新生を誘導できることが相次いで報告されている6). 以上の理論的, 実践的根拠に基づき, 2000年より久留米大学, 関西医科大学, 自治医科大学の3大学病院にて, 末梢動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症, Buerger病)患者への自己骨髄細胞の局所輸注(虚血部への筋肉内注射)が開始され, 有効な血管新生療法(TACT:therapeutic angiogenesis by cell transplantation)として報告された7). 名古屋大学においても血管外科, 循環器内科, 輸血部の協力により, TACTと同様なプロトコールで細胞治療が始まった(TACT-Nagoya). 以下にその概略と, 実際の症例を2例, 紹介する.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.51.537