感音難聴とめまい: 病態はどこまで分かったか —内耳MRI画像の進歩

従来, 難聴やめまいのMRI (Magnetic Resonance Imaging) 診断では聴神経腫瘍の有無や奇形, 椎骨脳底動脈循環不全, 脳腫瘍, 多発性硬化症などが診断される程度であり, 内耳のリンパ環境の変化については, 迷路炎によるリンパ腔の形態的変化や著明な内耳出血がない限り検出が困難であった. 近年, 3Tの登場とマルチチャンネルコイルによる信号雑音比の向上, 新しいパルスシークエンスソフトの開発による高速化などのMR技術の顕著な進歩が複合して, 内耳リンパ環境の変化を鋭敏に捉えることのできる3D-FLAIR (fluid attenuated inversion recov...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 113; no. 10; pp. 783 - 789
Main Authors 長縄, 慎二, 中島, 務
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 2010
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.113.783

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Summary:従来, 難聴やめまいのMRI (Magnetic Resonance Imaging) 診断では聴神経腫瘍の有無や奇形, 椎骨脳底動脈循環不全, 脳腫瘍, 多発性硬化症などが診断される程度であり, 内耳のリンパ環境の変化については, 迷路炎によるリンパ腔の形態的変化や著明な内耳出血がない限り検出が困難であった. 近年, 3Tの登場とマルチチャンネルコイルによる信号雑音比の向上, 新しいパルスシークエンスソフトの開発による高速化などのMR技術の顕著な進歩が複合して, 内耳リンパ環境の変化を鋭敏に捉えることのできる3D-FLAIR (fluid attenuated inversion recovery) が臨床応用可能となり, 従来は画像的な異常を検出できなかった突発性難聴やハント症候群, ムンプス難聴などの多くの患者で異常所見を検出し得るようになった. さらに3D-FLAIRを鼓室内ガドリニウム造影剤投与と組み合わせることによって, 内リンパ水腫を検出することが可能となった. しかし, 本法はガドリニウム造影剤の適応外使用であり, 侵襲性もあるので, 次のステップとして静脈注射での内リンパ腔描出を目指した. まず血液迷路関門の透過性が亢進していると思われる突発性難聴症例を対象に通常量静脈投与4時間後には迷路外リンパ腔が増強され, 前庭において内リンパ腔の認識が造影欠損として可能であることを示した. メニエール病については国内で認可されている最大量である2倍量のガドリニウム造影剤の静脈投与4時間後の3D-FLAIRで蝸牛, 前庭において内リンパ水腫を描出することに成功した. しかし, 静脈投与4時間後撮影は鼓室内ガドリニウム造影剤投与に比べて造影剤の外リンパ移行が不十分なことも多く, さらに薄い濃度の造影剤を検出する方法を検討している. このようにさまざまな内耳MRI研究は, 感音性難聴とめまいにおける画像を使った客観的医療の導入のきっかけとなることを目指して進化している.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.113.783