リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素のリガンド認識機構

「1. はじめに」 リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)は, 哺乳類の脳脊髄液中に豊富に存在するタンパク質であり, その機能は多岐にわたる. 当初, L-PGDSは, 睡眠誘発物質であるプロスタグランジン(PG) D2を合成する酵素として着目されてきた.1,2) L-PGDSは, くも膜細胞内でシクロオキシゲナーゼからPGH2を受け取り, PGD2への異性化反応を触媒する(Fig. 1). また, 一般的な酵素と異なり, 生成物のPGD2とも結合し, 細胞外に輸送すると考えられている. PGD2は, 睡眠薬によるものとは異なる自然な睡眠を誘発することから,3,4) L-PG...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 131; no. 11; pp. 1575 - 1581
Main Authors 島本, 茂, 吉田, 卓也, 大久保, 忠恭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 2011
日本薬学会
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Summary:「1. はじめに」 リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)は, 哺乳類の脳脊髄液中に豊富に存在するタンパク質であり, その機能は多岐にわたる. 当初, L-PGDSは, 睡眠誘発物質であるプロスタグランジン(PG) D2を合成する酵素として着目されてきた.1,2) L-PGDSは, くも膜細胞内でシクロオキシゲナーゼからPGH2を受け取り, PGD2への異性化反応を触媒する(Fig. 1). また, 一般的な酵素と異なり, 生成物のPGD2とも結合し, 細胞外に輸送すると考えられている. PGD2は, 睡眠薬によるものとは異なる自然な睡眠を誘発することから,3,4) L-PGDSの機能の解明により, 副作用の少ない睡眠導入薬の開発につながると期待されている. L-PGDSのもう1つの機能として, 沈着性の高い様々な疎水性低分子と結合できることが明らかになっている. L-PGDSはリポカリンファミリーと呼ばれる疎水性低分子輸送タンパク質ファミリーに属している.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.131.1575