ADL 維持向上等体制加算導入による肝細胞癌患者のADL 維持向上・フレイル予防効果

【目的】肝細胞癌(HCC) 患者はしばしば入院中に運動機能低下やactivitiesof daily living (ADL) の悪化を認め,それらは重要なHCC 患者の予後不良因子である.当院ではADL 維持向上等体制加算(ADL 加算) を算定することで,消化器内科病棟に理学療法士を専従配置し,入院患者のADL 維持向上とフレイル予防に取り組んでいる.本研究の目的は,ADL 加算導入よる入院中のHCC 患者に対するADL 維持向上・フレイル予防効果を検証することである.【方法】本研究は後ろ向き観察研究であり,2019 年4 月~ 2021 年1 月に当院消化器内科病棟に入院したHCC 患者...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2021; p. 130
Main Authors 松瀬, 博夫, 広田, 桂介, 川口, 巧, 山中, 真弥, 甲斐, 慎一郎, 原, 瑞帆, 松下, 淑子, 橋田, 竜騎, 田篭, 久実, 神谷, 俊次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2021
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2021.0_130

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Summary:【目的】肝細胞癌(HCC) 患者はしばしば入院中に運動機能低下やactivitiesof daily living (ADL) の悪化を認め,それらは重要なHCC 患者の予後不良因子である.当院ではADL 維持向上等体制加算(ADL 加算) を算定することで,消化器内科病棟に理学療法士を専従配置し,入院患者のADL 維持向上とフレイル予防に取り組んでいる.本研究の目的は,ADL 加算導入よる入院中のHCC 患者に対するADL 維持向上・フレイル予防効果を検証することである.【方法】本研究は後ろ向き観察研究であり,2019 年4 月~ 2021 年1 月に当院消化器内科病棟に入院したHCC 患者244 名を対象とした.年齢はmedian 78 歳 (IQR: 71-83, range: 44-94),女性85 名/ 男性159名であった.入院時と退院時にADL 評価としてBarthel Index(BI) を,フレイル評価としてliver frailty index (LFI) を評価した.多職種カンファレンスにて必要と判断した患者に対して,がんのリハビリテーションとして理学療法を実施し,その他の患者に対しても多職種で協力して離床支援や集団運動療法を行うことでADL 維持向上・フレイル予防に努めた.BI が入院中に悪化,維持,改善した者の割合をそれぞれ調査した(n=244).また,Wilcoxon 符号付順位検定にて入院時と退院時のLFI を比較検討した(n=244).さらに,理学療法あり群(n=62) と,理学療法群(n=182) それぞれでWilcoxon 符号付順位検定を用いて入院時と退院時のBI とLFI を比較検討した.【結果】本研究におけるHCC 患者のBI はmedian 100 (IQR: 95-100, range:30-100),LFI はmedian 3.67 (IQR: 3.26-4.30, range: 1.84-6.70)であり,LFI により決定されるフレイル判定では,全体の19%がrobust,34%がless-robust,25%がpre-frail,22%がfrail であった.在院日数はmedian11 日(IQR: 9-13, range: 6-43).62 名/244 名(25% ) に対して理学療法を実施した.244 名のうち入院時と比較して退院時にBI が悪化,維持,改善した者の割合はそれぞれ悪化0%,維持84%,改善16%であった.244 名のLFI は入院時と比較して退院時に有意な改善を認めた(3.67 vs. 3.64, P=0.0006).理学療法あり群(n=62) では入院時と比較して退院時にBI とLFI の有意な改善を認めた(BI: 90 vs. 100, P=0.0001, LFI: 4.35 vs. 4.32, P=0.0083), 一方,理学療法群(n=182) ではBI に有意な改善を認めたが,LFIには有意な悪化を認めた(BI: 100 vs. 100, P=0.0003, LFI: 3.51 vs.3.52, P=0.0132).【結論】本研究により,ADL 加算による消化器内科病棟への理学療法士専従配置は入院中のHCC 患者のADL を維持向上させ,フレイルを改善させることが明らかとなった.理学療法士の病棟専従配置によって,カンファレンスへの参加や早期のフレイル評価が容易になり,迅速かつ柔軟な多職種連携が可能になった.本研究結果から,急性期病棟にADL 加算を導入することにより,円滑な治療遂行に繋がる可能性が示唆される.しかしながら,理学療法群のLFI は有意な悪化を認めており,今後は,入院中のLFI 悪化の要因を調査し,より効果的なフレイル改善策を検討していく必要があると思われる.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守して実施された.また,本研究は当大学臨床研究センターの承認を受けている( 承認番号:19020).本研究に関して開示するべき利益相反はない.
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2021.0_130