癌の温熱療法

温熱療法は, 癌の温度を人為的に上昇させることにより癌の制御をめざす治療法であり, ハイパーサーミア, 加温療法, あるいは高温療法といわれることもある. 熱は古くから種々の病気の治療に用いられており, すでに紀元前2000年頃, 医聖ヒポクラテスは癌に焼灼治療が有効と述べている. 近年は温熱療法のルネッサンスと考えられる. 数多くの実験にて温熱療法の生物学的根拠が示されたこと, 加温測温という物理工学面の進歩により医療用加温装置が開発され, よく計画された臨床治験が世界中で積極的に行われたことによる. 温熱療法が癌の治療に有効と考えられる生物学的根拠としては, 以下の6点があげられる. (1...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 60; no. 1; pp. 10 - 12
Main Author 平岡, 真寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本温泉気候物理医学会 1996
日本温泉気候物理医学会
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Summary:温熱療法は, 癌の温度を人為的に上昇させることにより癌の制御をめざす治療法であり, ハイパーサーミア, 加温療法, あるいは高温療法といわれることもある. 熱は古くから種々の病気の治療に用いられており, すでに紀元前2000年頃, 医聖ヒポクラテスは癌に焼灼治療が有効と述べている. 近年は温熱療法のルネッサンスと考えられる. 数多くの実験にて温熱療法の生物学的根拠が示されたこと, 加温測温という物理工学面の進歩により医療用加温装置が開発され, よく計画された臨床治験が世界中で積極的に行われたことによる. 温熱療法が癌の治療に有効と考えられる生物学的根拠としては, 以下の6点があげられる. (1)41-45℃と人体に適用可能な温度域で殺細胞効果が認められる(図1). (2)腫瘍組織では増殖パターンやエネルギー代謝が正常組織と異なるため, 低pH, 低栄養の環境に置かれているが, それらの状態では細胞の熱感受性が著しく高まる. そのため, 温熱療法により腫瘍の選択的な破壊が期待できる.
ISSN:0029-0343
1884-3697
DOI:10.11390/onki1962.60.10