グリセリン浣腸に起因する直腸損傷の4例

グリセリン浣腸は術前処置などの日常臨床,便秘に対する家庭での医療行為として頻繁に行われている.しかし,浣腸により直腸損傷をきたし,腹膜炎を併発して人工肛門造設術が必要となった症例や,グリセリンが血管内に迷入し溶血,急性腎不全へ移行した症例も報告されている. 当院で経験したグリセリン浣腸による直腸損傷の4例について報告する. 性別はすべて女性.年齢は59~91歳で,3例は85歳以上の高齢者であった.3例で便秘に対して自宅で浣腸が施行され,1例は内視鏡検査前処置として院内で施行された症例であった.CT検査では全例に直腸周囲の遊離ガス像,脂肪濃度上昇を認め,1例では広範囲に後腹膜気腫を認めた.全例,...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 69; no. 7; pp. 379 - 386
Main Authors 川上, 和彦, 甲田, 貴丸, 木村, 浩三, 相川, 佳子, 中井, 勝彦, 田中, 荘一, 野中, 雅彦, 松田, 保秀, 松田, 聡, 新井, 賢一郎, 尾田, 典隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2016
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.69.379

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Summary:グリセリン浣腸は術前処置などの日常臨床,便秘に対する家庭での医療行為として頻繁に行われている.しかし,浣腸により直腸損傷をきたし,腹膜炎を併発して人工肛門造設術が必要となった症例や,グリセリンが血管内に迷入し溶血,急性腎不全へ移行した症例も報告されている. 当院で経験したグリセリン浣腸による直腸損傷の4例について報告する. 性別はすべて女性.年齢は59~91歳で,3例は85歳以上の高齢者であった.3例で便秘に対して自宅で浣腸が施行され,1例は内視鏡検査前処置として院内で施行された症例であった.CT検査では全例に直腸周囲の遊離ガス像,脂肪濃度上昇を認め,1例では広範囲に後腹膜気腫を認めた.全例,非観血的療法(絶食,輸液療法,抗生剤投与)により軽快し,観血的療法を要した症例はなかった.1例でグリセリンによる溶血を認めたが,輸液,利尿薬投与により改善し,腎不全への進展はみられなかった.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.69.379