肝性脳症用アミノ酸注射液の長期投与により高クロール性代謝性アシドーシスを発症したC型肝硬変症の1例

症例はC型肝硬変症の63歳, 男性.本例は, 重篤な肝性昏睡により頻回に入退院を繰り返していたが, 消化管出血の合併により肝性昏睡がより重篤化, 遷延化した.アミノ酸輸液により改善傾向を示していたが, 投与24日目に急速な意識障害の進行と頻呼吸が出現した.臨床検査上, 血中尿素窒素, アンモニアの著明高値とともに高クロール性代謝性アシドーシスが明らかで, アミノ酸輸液を中止し, 炭酸水素ナトリウムの輸液を開始した結果, 臨床症状は急速に改善した.本例に用いた肝性脳症用アミノ酸輸液 (アミノレバン®) はクロールイオンを含有しており, 大量, 長期にわたる特殊分岐鎖アミノ酸製剤の投与が, 高クロ...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 50; no. 6; pp. 535 - 541
Main Authors 阿部, 毅彦, 新井, 弘隆, 岩崎, 靖樹, 小野里, 康博, 萩原, 聡, 奈良, 真美, 石原, 弘, 鈴木, 秀行, 伊藤, 秀明, 下田, 隆也, 小曽根, 隆, 高木, 均, 森, 昌朋, 月岡, 玄吾, 長嶺, 竹明, 市川, 武, 山崎, 勇一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 2000
Subjects
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ISSN1343-2826
1881-1191
DOI10.2974/kmj.50.535

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Summary:症例はC型肝硬変症の63歳, 男性.本例は, 重篤な肝性昏睡により頻回に入退院を繰り返していたが, 消化管出血の合併により肝性昏睡がより重篤化, 遷延化した.アミノ酸輸液により改善傾向を示していたが, 投与24日目に急速な意識障害の進行と頻呼吸が出現した.臨床検査上, 血中尿素窒素, アンモニアの著明高値とともに高クロール性代謝性アシドーシスが明らかで, アミノ酸輸液を中止し, 炭酸水素ナトリウムの輸液を開始した結果, 臨床症状は急速に改善した.本例に用いた肝性脳症用アミノ酸輸液 (アミノレバン®) はクロールイオンを含有しており, 大量, 長期にわたる特殊分岐鎖アミノ酸製剤の投与が, 高クロール性代謝性アシドーシスの発症につながったと考えられた.本症例に限らず, 重篤化, 遷延化している肝性昏睡のアミノ酸製剤を用いた治療にあたっては, 酸塩基バランスの異常, アンモニアの上昇, クロールの上昇, および, 血中尿素窒素値の上昇とそれに伴う血漿浸透圧の上昇等に常に注意を払う必要があると考えられた.
ISSN:1343-2826
1881-1191
DOI:10.2974/kmj.50.535