輸血後肝炎
数年前ライシャワー大使が, 約30年前に日本で受けた輸血により肝硬変になって死亡したことは記憶に新しい. このように輸血後肝炎は慢性化すると, 時に致命的な経過をたどることがあり, 又つい数年前までは輸血の副作用の主要な部分を占めていた. しかし1989年末に始まる, B型, C型肝炎ウイルススクリーニングの進歩により, 今日では症例報告に値する程, その発生は少なくなった. この機会に輸血後肝炎克服の歴史を訪ね, 将来の新たな輸血感染症防止への展望を探ることは有意義なことであると考える. 1. 定義と診断基準 輸血後肝炎とは文字通り輸血後におこる肝炎であるが, そのうち輸血が原因となった感染...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 3; pp. 335 - 342 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
1997
日本輸血学会 |
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Summary: | 数年前ライシャワー大使が, 約30年前に日本で受けた輸血により肝硬変になって死亡したことは記憶に新しい. このように輸血後肝炎は慢性化すると, 時に致命的な経過をたどることがあり, 又つい数年前までは輸血の副作用の主要な部分を占めていた. しかし1989年末に始まる, B型, C型肝炎ウイルススクリーニングの進歩により, 今日では症例報告に値する程, その発生は少なくなった. この機会に輸血後肝炎克服の歴史を訪ね, 将来の新たな輸血感染症防止への展望を探ることは有意義なことであると考える. 1. 定義と診断基準 輸血後肝炎とは文字通り輸血後におこる肝炎であるが, そのうち輸血が原因となった感染症という意味で使われる. また伝統的には肝炎ウイルスに起因するものに限っている. 全身病の一環として肝機能異常をきたすウイルスならば他にもたくさんあるが, 輸血後肝炎とは言わないわけである. したがって, これには本来臨床診断だけではなくて, 検査室診断, つまり病因論的診断が要求されるわけである. しかしながら血液で感染する肝炎ウイルスは, Prince, 大河内らによるオーストラリア抗原とB型肝炎との関連の解明1)似後, いわゆる非A非B型肝炎ウイルスは長い間発見されなかった. それゆえ輸血後肝炎の診断基準は苦心を強いられてきたのである. |
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ISSN: | 0546-1448 1883-8383 |
DOI: | 10.3925/jjtc1958.43.335 |