抗リン脂質抗体腎症の病理組織像を呈し抗凝固療法が奏功したSLEの一例

32歳女性。1990年3月に皮下出血と多関節痛が出現し、他院で、血小板減少、抗核抗体陽性、梅毒反応生物学的偽陽性 、ループス抗凝固因子陽性よりSLEと診断、PSL20mg/日が開始された。1992年6月、PSL 15 mg/日投与中に当科に転院、その後PSL減量とともに血小板減少と出血症状を繰り返した。2002年2月、PSL15mg/日投与中に蛋白尿が出現、9月に血清クレアチニン(Cr)が1.4 mg/dl と上昇。同年10月にPSL30mg/日に増量したが蛋白尿と血清Cr高値が続き、腎生検を施行。腎生検所見では、明らかなimmune depositを認めず、光顕での double tract...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床免疫学会総会抄録集 p. 101
Main Authors 木村, 納子, 安岡, 秀剛, 花岡, 洋成, 古屋, 善章, 高田, 哲也, 香月, 有美子, 金子, 祐子, 野島, 崇樹, 佐藤, 慎二, 諏訪, 昭, 平形, 道人, 小西, 孝之助
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2005
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:32歳女性。1990年3月に皮下出血と多関節痛が出現し、他院で、血小板減少、抗核抗体陽性、梅毒反応生物学的偽陽性 、ループス抗凝固因子陽性よりSLEと診断、PSL20mg/日が開始された。1992年6月、PSL 15 mg/日投与中に当科に転院、その後PSL減量とともに血小板減少と出血症状を繰り返した。2002年2月、PSL15mg/日投与中に蛋白尿が出現、9月に血清クレアチニン(Cr)が1.4 mg/dl と上昇。同年10月にPSL30mg/日に増量したが蛋白尿と血清Cr高値が続き、腎生検を施行。腎生検所見では、明らかなimmune depositを認めず、光顕での double tract、電顕での広範な内皮下腔拡大、電顕・光顕でのmesangiolysis を示唆する所見があり、血栓形成は認めないものの糸球体のthrombotic microangiopathy の存在が示唆された。また、小動脈のフィブリン血栓と内膜肥厚の所見を認めたことより、本症例の腎障害はループス腎炎ではなく小血管の非炎症性閉塞が主体で、抗リン脂質抗体が関与するものと考えられ、2003年4月より抗凝固療法を開始し、尿蛋白消失、腎機能の改善が認められた。SLE症例における腎障害の病態や治療法を考えるうえで貴重な症例であり報告する。
Bibliography:11-8
ISSN:1880-3296
DOI:10.14906/jscisho.33.0.101.0