自己免疫疾患における脂肪由来間葉系幹細胞を介した異所性石灰化機構

【背景・目的】強皮症や皮膚筋炎の皮下異所性石灰化は、アポトーシスに伴うカルシウム沈着と考えられてきたが、最近では骨芽細胞様の石灰化機序が考えられている。そこで、皮下脂肪組織中の多能性幹細胞(ADSC)が、炎症性サイトカインによって骨芽細胞様に分化誘導される可能性を検討した。【方法】骨芽細胞分化誘導培地でADSCを培養し、IL-6/IL-6R、TNFα、IL-1βの添加または末梢血単核球細胞(PBMCs)と共培養を行い、石灰化につき検討した。【結果】ADSCとPBMCsの共培養では、8日目に著明な石灰化と骨芽細胞分化マーカーの発現を認めた。IL-6/IL-6R、TNFα、IL-1βをADSCに添...

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Published inNihon Rinsho Men'eki Gakkai Sokai Shorokushu Vol. 39; p. 113
Main Authors 田中, 良哉, 山岡, 邦宏, 福與, 俊介, 園本, 格士朗, 尾下, 浩一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2011
The Japan Society for Clinical Immunology
Subjects
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ISSN1880-3296
DOI10.14906/jscisho.39.0.113.0

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Summary:【背景・目的】強皮症や皮膚筋炎の皮下異所性石灰化は、アポトーシスに伴うカルシウム沈着と考えられてきたが、最近では骨芽細胞様の石灰化機序が考えられている。そこで、皮下脂肪組織中の多能性幹細胞(ADSC)が、炎症性サイトカインによって骨芽細胞様に分化誘導される可能性を検討した。【方法】骨芽細胞分化誘導培地でADSCを培養し、IL-6/IL-6R、TNFα、IL-1βの添加または末梢血単核球細胞(PBMCs)と共培養を行い、石灰化につき検討した。【結果】ADSCとPBMCsの共培養では、8日目に著明な石灰化と骨芽細胞分化マーカーの発現を認めた。IL-6/IL-6R、TNFα、IL-1βをADSCに添加したところ、培養8日目には何れのサイトカインも濃度依存性に石灰化増強作用骨芽細胞分化マーカーの発現を認めたが、IL-6/IL-6Rで最も強い石灰化増強作用を認めた。なお、IL-6単独では作用がなかった。PBMCsとの共培養上清中には高濃度のIL-6を認め、抗IL-6受容体抗体添加による石灰化抑制作用を認めた。さらに培養1日目にTNFα、IL-1βではWNT5A、IL-6ではROR2の発現増強を認めたが、βカテニンは著変なく、non-cannonical pathwayの、石灰化増強作用への関与が考えられた。【考察】皮下組織などの間葉系組織の炎症を伴う自己免疫疾患では、炎症性サイトカインがADSCに作用し、骨芽細胞分化に重要なWntシグナル経路を介した異所性石灰化の機序が考えられた。
Bibliography:PW-29
ISSN:1880-3296
DOI:10.14906/jscisho.39.0.113.0