下腸間膜動脈が欠損し中結腸動脈左枝が支配動脈であったS状結腸癌の1例

cT3以深の大腸癌手術においては支配動脈根部までのD3郭清が原則であり,支配動脈に破格がある場合も同様である.今回,下腸間膜動脈が完全に欠損し,上腸間膜動脈から分岐する中結腸動脈左枝が辺縁動脈として直腸まで血流を供給している症例におけるS状結腸癌手術を経験した.73歳男性がS状結腸癌のため腹部造影CTを行ったところ下腸間膜動脈が欠損しており,上腸間膜動脈から分岐する中結腸動脈の左枝が発達し,辺縁動脈として直腸まで血流を供給していた.手術では下腹神経前筋膜を温存する層でS状結腸間膜を授動し,D3に相当する郭清をした.T3,N0,M0,pStage IIと診断し,術後2年無再発生存中である.本破格...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 71; no. 1; pp. 37 - 40
Main Authors 伊藤, 直, 原田, 幸志朗, 春木, 伸裕, 辻, 秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2018
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.71.37

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Summary:cT3以深の大腸癌手術においては支配動脈根部までのD3郭清が原則であり,支配動脈に破格がある場合も同様である.今回,下腸間膜動脈が完全に欠損し,上腸間膜動脈から分岐する中結腸動脈左枝が辺縁動脈として直腸まで血流を供給している症例におけるS状結腸癌手術を経験した.73歳男性がS状結腸癌のため腹部造影CTを行ったところ下腸間膜動脈が欠損しており,上腸間膜動脈から分岐する中結腸動脈の左枝が発達し,辺縁動脈として直腸まで血流を供給していた.手術では下腹神経前筋膜を温存する層でS状結腸間膜を授動し,D3に相当する郭清をした.T3,N0,M0,pStage IIと診断し,術後2年無再発生存中である.本破格例は極めて稀で,腸管傍リンパ節に転移が認められた場合に中結腸動脈根部方向への追加郭清を行うべきかどうか定かではない.稀な破格に対してはリンパ流を個々に想定して郭清範囲を決定する必要がある.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.71.37