脳血管障害急性期の心電図所見

頭部CTおよび脳血管造影で診断が確定した150例の急性期脳血管障害患者につき,入院時の心電図変化と検査所見,重症度,病変部位などとの比較検討を行なつた.内訳は,くも膜下出血43例(男17,女26,平均年令50.2才)脳内出血87例(男63,女24,平均年令54.0才)脳梗塞20例(男15,女5,平均年令56.3才)で, 70才以上,明らかな心疾患の既往を有する例,心房細動例などは除外した.各群ともに約80%に心電図異常がみられ, ST-T変化, QT時間延長,左室肥大などの頻度が多かつた. QT時間延長は,くも膜下出血では58%にみられ,脳内出血(38%),脳梗塞(25%)より有意に高頻度であ...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 72; no. 11; pp. 1519 - 1526
Main Authors 久保, 進, 江良, 修, 田川, 秀樹, 福井, 純, 松本, 保和, 坂井, 明紀, 今村, 俊之, 古賀, 秀隆, 原, 耕平, 大江, 宣春
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 1983
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Summary:頭部CTおよび脳血管造影で診断が確定した150例の急性期脳血管障害患者につき,入院時の心電図変化と検査所見,重症度,病変部位などとの比較検討を行なつた.内訳は,くも膜下出血43例(男17,女26,平均年令50.2才)脳内出血87例(男63,女24,平均年令54.0才)脳梗塞20例(男15,女5,平均年令56.3才)で, 70才以上,明らかな心疾患の既往を有する例,心房細動例などは除外した.各群ともに約80%に心電図異常がみられ, ST-T変化, QT時間延長,左室肥大などの頻度が多かつた. QT時間延長は,くも膜下出血では58%にみられ,脳内出血(38%),脳梗塞(25%)より有意に高頻度であつた(p<0.05).生存群と死亡群の比較では,死亡群に洞性頻脈(p<0.01), ST-T変化(p<0.1)を多くみとめ,不整脈の頻度も高かつたが, U波は逆に生存群に多くみられた(p<0.01).また意識障害の程度が強くなるほど洞性頻脈,不整脈,左室肥大の頻度が高かつた.脳内出血部位の比較では,橋出血にST-T変化が有意に多くみられ(p<0.1),視床出血ではQT時間延長が多い傾向がみられた.検査所見では,くも膜下出血や重症例では白血球増加,高血糖などが高度にみられ, GOTやLDHの上昇は10~44%にみられた.これら心電図変化の成因については諸説があるが,くも膜下出血では,脳血管のspasmとともに冠動脈のspasmがおこつている可能性が考えられた.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.72.1519