全身性若年性特発性関節炎(sJIA)の病態と治療―MASを含めて
若年性特発性関節炎JIAは、16歳未満で発症した原因不明の慢性関節炎に対するumbrella nameであり、成人RAに相当するRF陽性多関節型を含む7病型に分類される。全身性関節炎systemic arthritis (sJIA)はJIAの一病型であり、成人発症Still病と類似した病態を示すが、本邦ではJIA全体の41%を占め、約1200例の患者が推定されている。 これまで、sJIAの炎症病態の形成には多様なサイトカインが複雑に関与しているものと思われていた。実際、sJIAに対し抗TNF療法が試みられたが、全身性炎症病態に対する有効性は得られなかった。ところが、sJIAに対し抗IL-6受容...
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Published in | Nihon Rinsho Men'eki Gakkai Sokai Shorokushu Vol. 36; p. 60 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床免疫学会
2008
The Japan Society for Clinical Immunology |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-3296 |
DOI | 10.14906/jscisho.36.0.60.0 |
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Summary: | 若年性特発性関節炎JIAは、16歳未満で発症した原因不明の慢性関節炎に対するumbrella nameであり、成人RAに相当するRF陽性多関節型を含む7病型に分類される。全身性関節炎systemic arthritis (sJIA)はJIAの一病型であり、成人発症Still病と類似した病態を示すが、本邦ではJIA全体の41%を占め、約1200例の患者が推定されている。 これまで、sJIAの炎症病態の形成には多様なサイトカインが複雑に関与しているものと思われていた。実際、sJIAに対し抗TNF療法が試みられたが、全身性炎症病態に対する有効性は得られなかった。ところが、sJIAに対し抗IL-6受容体抗体を導入し、受容体を介したIL-6のシグナル伝達をブロックすると、全身性炎症病態及び関節炎病態は完璧に抑制され、JIA core set 70%改善を達成した症例は70%に達した。この臨床成績は、IL-6がsJIA病態の中核的サイトカインであることを示している。 一方、sJIAの7.7%は、様々な要因を契機にマクロファージ活性化症候群MASへと進展する。sJIAにみられるMASの経過は急激で、10-20%が多臓器不全で死亡するため、IL-6抑制がMASの発生抑止、あるいは治療として期待された。しかし現実にはIL-6遮断療法中にもMASは発生し、DICや臓器障害が発現しても、発熱などの全身状態はマスクされる(MAS Masked by tocilizuMab: 3M)ため、却って早期発見を難しくすることが判明した。同時にsJIAにみられるMASでは、IL-6はkey cytokineではないことも明らかとなった。 このように、tocilizumabはIL-6をpinpointで阻害することで、sJIA病態におけるIL-6の役割を明らかにした。Bedsideからの情報が病態を解明する時代を迎えている。 |
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Bibliography: | ES1-2 |
ISSN: | 1880-3296 |
DOI: | 10.14906/jscisho.36.0.60.0 |