800m走ラストスパートのエネルギー供給機構

本研究では800m走のラストスパートに関与するエネルギー供給機構について調べた.被検者は19~23歳の男性800m走競技者9名であり, 過去1年以内の最高記録から成績の高いA群と低いB群に二分した.実験は走スピードを規定した600mテスト, 及び600mまでを前者と同スピードで走り, 残り200mを最大努力走 (ラストスパート) する800mテストの2種目のランニングテストを行った.600mまでの走スピードの規定は自作の電灯式走ペースメーカーによった.採血は安静, 準備運動後, ランニングテスト後の6分目および10分目とし, 血漿乳酸, 血漿アンモニア, 血清グルコースおよび血液pHの分析を行...

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Published in体力科学 Vol. 42; no. 2; pp. 173 - 182
Main Authors 戸塚, 学, 丹羽, 哲次, 冨岡, 徹, 井上, 辰樹, 広田, 公一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本体力医学会 1993
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ISSN0039-906X
1881-4751
DOI10.7600/jspfsm1949.42.173

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Summary:本研究では800m走のラストスパートに関与するエネルギー供給機構について調べた.被検者は19~23歳の男性800m走競技者9名であり, 過去1年以内の最高記録から成績の高いA群と低いB群に二分した.実験は走スピードを規定した600mテスト, 及び600mまでを前者と同スピードで走り, 残り200mを最大努力走 (ラストスパート) する800mテストの2種目のランニングテストを行った.600mまでの走スピードの規定は自作の電灯式走ペースメーカーによった.採血は安静, 準備運動後, ランニングテスト後の6分目および10分目とし, 血漿乳酸, 血漿アンモニア, 血清グルコースおよび血液pHの分析を行った.酸素負債はランニングテスト後38分間の値を採用した.結果は次のようであった. 1) 600mまでの走タイムには両群間に有意な差はみられなかったが, ラストスパートタイムはA群がB群にくらべ有意な速い値を示した.2) ラストスパートでの血漿乳酸および血漿アンモニア値は, A群のみが有意に増加した.3) ラストスパートのタイムとその時の血漿乳酸, 酸素負債の値に, それぞれ有意な負の相関関係が認められた. 以上の結果から, 800mのラストスパートの成績には無酸素性エネルギー供給能力の貢献が特に強く, その成績は, ラストスパート前の血漿乳酸等が示す無酸素性エネルギー供給能力の余力と正の関係をもつものと結論した.
ISSN:0039-906X
1881-4751
DOI:10.7600/jspfsm1949.42.173