集中治療を要する重症患者に対する理学療法

重症患者の生存率向上に伴い,ICU退室後の長期にわたる後遺症を有する患者の存在やその生活状況が明らかになってきた.退院後も続く身体・認知機能の障害や精神的な障害はICU生存患者の社会復帰や長期予後の障壁となっている.このような中,ICU治療における患者の苦痛やストレスなど,患者を中心とした痛み・不穏・せん妄管理に対し「成人重症患者に対する鎮痛・鎮静薬の使用に関するガイドライン(PADガイドライン)」が改訂され,この中で早期離床を目指したICUでのリハビリテーションに関する内容も組み込まれた.その後PADガイドラインは不動と睡眠に関わる問題が追加されたPADISガイドラインへ改訂され,鎮痛・鎮静...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 83; no. 5; pp. 286 - 293
Main Author 田代, 尚範
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2023
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.83.286

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Summary:重症患者の生存率向上に伴い,ICU退室後の長期にわたる後遺症を有する患者の存在やその生活状況が明らかになってきた.退院後も続く身体・認知機能の障害や精神的な障害はICU生存患者の社会復帰や長期予後の障壁となっている.このような中,ICU治療における患者の苦痛やストレスなど,患者を中心とした痛み・不穏・せん妄管理に対し「成人重症患者に対する鎮痛・鎮静薬の使用に関するガイドライン(PADガイドライン)」が改訂され,この中で早期離床を目指したICUでのリハビリテーションに関する内容も組み込まれた.その後PADガイドラインは不動と睡眠に関わる問題が追加されたPADISガイドラインへ改訂され,鎮痛・鎮静管理の進歩によりICUにおける早期リハビリテーションは飛躍的に普及し,人工呼吸期間の短縮や日常生活動作の改善をもたらした.ICUにおける理学療法士の役割は,1)身体機能改善に向けた運動療法や早期離床,ならびに合併症の予防,2)具体的な運動プログラムの立案と実施の調整,3)患者のアセスメント,4)運動時のモニタリング,5)効果のフィードバックと多岐にわたる.重症疾患をのりきった後,やり残していた人生の計画を実現するため,患者がどのように生きるかにしっかり耳を傾け,身体機能の回復支援やさまざまな合併症への対策を多職種で連携して実践することが,退院後の長期予後を明るいものへ変えていくものと考える.今後さらに高齢者人口が増加してくる中,集中治療後症候群に対する確立した治療戦略は未だ明らかになっていない.これからは高齢者の特性に合わせ,長期予後を見据えたきめ細やかな理学療法介入が求められる.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.83.286