多房性嚢胞性肺転移をきたした直腸癌の1例

症例は55歳の男性.52歳時に直腸癌に対し腹腔鏡下高位前方切除術を行い,その後異時性肝転移に対して肝切除を行った.一方で初回治療時に左肺S8領域にごくわずかな空洞を有する結節性病変が認められ,その後の治療中に経時的に施行した胸部CTで多彩な形態変化を呈し,多房性嚢胞性病変へと変化した.空洞内の壁は不整で,胸膜嵌入,脈管浸潤を伴う所見を認めることにより原発性肺癌を強く疑い,胸腔鏡下左下葉切除術を行った.切除検体では病巣は肉眼的に19mm大の境界不明瞭な腫瘍で,病理組織学的診断では転移性腺癌であり,直腸癌からの転移と診断した.大腸癌の治療経過の中で空洞を伴う多彩な形態変化を呈する病変に関しては,転...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 72; no. 3; pp. 135 - 139
Main Authors 勝又, 健次, 松土, 尊映, 桒原, 寛, 久保山, 侑, 土田, 明彦, 石崎, 哲夫, 榎本, 正統
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2019
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.72.135

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Summary:症例は55歳の男性.52歳時に直腸癌に対し腹腔鏡下高位前方切除術を行い,その後異時性肝転移に対して肝切除を行った.一方で初回治療時に左肺S8領域にごくわずかな空洞を有する結節性病変が認められ,その後の治療中に経時的に施行した胸部CTで多彩な形態変化を呈し,多房性嚢胞性病変へと変化した.空洞内の壁は不整で,胸膜嵌入,脈管浸潤を伴う所見を認めることにより原発性肺癌を強く疑い,胸腔鏡下左下葉切除術を行った.切除検体では病巣は肉眼的に19mm大の境界不明瞭な腫瘍で,病理組織学的診断では転移性腺癌であり,直腸癌からの転移と診断した.大腸癌の治療経過の中で空洞を伴う多彩な形態変化を呈する病変に関しては,転移巣である可能性も念頭に置き,慎重な経過観察と病因検索が必要である.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.72.135