腹腔鏡が損傷部位同定に有用であった腹部打撲による小腸穿孔の1例

症例は57歳男性.通勤ラッシュの駅構内で駆け込み乗車をしようとしたところ,ホームの防護柵で左上腹部を打撲.直後より,心窩部の激痛を自覚し,近医に救急搬送された.心窩部に圧痛と腹膜刺激症状,腹部CTで肝表面に遊離ガスを認め,穿孔性腹膜炎の診断で当科紹介となった.受傷5時間後に小腸穿孔を強く疑い,腹腔鏡下に腹腔内観察したところ,中等量の汚染腹水を左横隔膜下に認めた.胃,十二指腸に異常所見は認めなかったが,上部小腸周囲に白苔を伴う炎症所見が観察されたため,上腹部正中に4cmの小切開を追加した.創外で小腸を検索したところ,Treitz靭帯より約35cm肛門側の小腸に約1.5cm×1.0cmの穿孔部を1...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 75; no. 4; pp. 486 - 489
Main Authors 山崎, 公靖, 北島, 徹也, 松田, 和広, 加藤, 貴史, 村上, 雅彦, 大塚, 耕司, 渡辺, 誠, 野垣, 航二, 五藤, 哲, 草野, 智一, 青木, 武士, 内田, 茉莉依, 藤政, 浩一朗, 大野, 浩平, 藤森, 聰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2015
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.75.486

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Summary:症例は57歳男性.通勤ラッシュの駅構内で駆け込み乗車をしようとしたところ,ホームの防護柵で左上腹部を打撲.直後より,心窩部の激痛を自覚し,近医に救急搬送された.心窩部に圧痛と腹膜刺激症状,腹部CTで肝表面に遊離ガスを認め,穿孔性腹膜炎の診断で当科紹介となった.受傷5時間後に小腸穿孔を強く疑い,腹腔鏡下に腹腔内観察したところ,中等量の汚染腹水を左横隔膜下に認めた.胃,十二指腸に異常所見は認めなかったが,上部小腸周囲に白苔を伴う炎症所見が観察されたため,上腹部正中に4cmの小切開を追加した.創外で小腸を検索したところ,Treitz靭帯より約35cm肛門側の小腸に約1.5cm×1.0cmの穿孔部を1か所認めた.穿孔部位をトリミング後に縫合閉鎖し,手術終了とした.その他,明らかな臓器損傷部位は認めなかった.術後経過良好で,第11病日に退院となった.鈍的腹部外傷による小腸穿孔は術前診断・穿孔部位同定に難渋することが多い.循環動態が安定していれば腹腔鏡下手術は低侵襲下に診断,治療が施行できるため有用であると考えられた.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.75.486