薬剤起因免疫性溶血性貧血をきたしたと思われる2症例

薬剤起因溶血性貧血は, 免疫機序の有無の観点から非免疫性と免疫性に大別される. 前者はさらに2分され, 1つは薬剤が赤血球に対し直接toxicに作用することにより, もう1つはG-6-PDや不安定ヘモグロビン症等の質的障害を有する赤血球に対し, 薬剤またはその代謝産物のもつ酸化的作用により溶血をもたらす場合である. 一方, 後者では薬剤が抗薬物抗体や自己抗体の産生を促し, 赤血球をとりまく免疫学的機序により溶血をもたらすと考えられている. 免疫性溶血性貧血では, 通常, 直接抗グロブリン試験(以下DAT)は陽性を示すことから, 非免疫性との鑑別は容易である. 検査時にDATが陽性を示したことに...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 5; pp. 614 - 618
Main Authors 安田, 広康, 八巻, 淳子, 橋本, 長吉, 遠山, ゆり子, 田崎, 哲典, 大戸, 斉, 阿部, 力哉, 一瀬, 裕子, 橋本, 重厚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 1990
日本輸血学会
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Summary:薬剤起因溶血性貧血は, 免疫機序の有無の観点から非免疫性と免疫性に大別される. 前者はさらに2分され, 1つは薬剤が赤血球に対し直接toxicに作用することにより, もう1つはG-6-PDや不安定ヘモグロビン症等の質的障害を有する赤血球に対し, 薬剤またはその代謝産物のもつ酸化的作用により溶血をもたらす場合である. 一方, 後者では薬剤が抗薬物抗体や自己抗体の産生を促し, 赤血球をとりまく免疫学的機序により溶血をもたらすと考えられている. 免疫性溶血性貧血では, 通常, 直接抗グロブリン試験(以下DAT)は陽性を示すことから, 非免疫性との鑑別は容易である. 検査時にDATが陽性を示したことにより, 臨床症状や治療との因果関係を調査する中で, まれに薬剤起因免疫性溶血性貧血に遭遇することがある. 我々は, 合成ペニシリン系抗生物質であるAspoxicillin(ドイル^R :以下Asp)とセフェム系抗生物質であるSodium sulbuctam・Sodium-cefoperazone(スルペラゾン^R :以下SBT/CPZ)によると思われる2症例を経験したので報告する.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.36.614