オレフィン重合触媒における分子内引力相互作用―連鎖移動の制御

オレフィン重合における触媒活性種分子内の引力的相互作用と,この相互作用が重合反応に及ぼす影響について概説する.従来,オレフィン重合触媒の設計は触媒とオレフィンやポリマー鎖の立体的な反発を利用して,分子量や立体規則性といったポリマーの一次構造を制御する方法が,一般的であった.近年,オレフィン重合において困難とされていたリビング重合を進行させるポストメタロセン触媒がいくつか報告されている.これらのうち,配位子にF原子をもつ触媒は,このF原子とポリマー鎖との間に,C-F H-C引力的相互作用が存在し,この相互作用によりリビング重合が達成されると考えられている.このような,非共有結合性の引力的な相互作...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in高分子論文集 Vol. 75; no. 6; pp. 486 - 496
Main Authors 藤田, 照典, 石井, 聖一, 寺尾, 浩志, 中野, 隆志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 25.11.2018
Online AccessGet full text
ISSN0386-2186
1881-5685
DOI10.1295/koron.2018-0028

Cover

Loading…
More Information
Summary:オレフィン重合における触媒活性種分子内の引力的相互作用と,この相互作用が重合反応に及ぼす影響について概説する.従来,オレフィン重合触媒の設計は触媒とオレフィンやポリマー鎖の立体的な反発を利用して,分子量や立体規則性といったポリマーの一次構造を制御する方法が,一般的であった.近年,オレフィン重合において困難とされていたリビング重合を進行させるポストメタロセン触媒がいくつか報告されている.これらのうち,配位子にF原子をもつ触媒は,このF原子とポリマー鎖との間に,C-F H-C引力的相互作用が存在し,この相互作用によりリビング重合が達成されると考えられている.このような,非共有結合性の引力的な相互作用によるオレフィン重合反応の制御は,従来の立体反発による制御とは異なるアプローチである.本報では,前周期および後周期遷移金属のポストメタロセン触媒における,配位子中のF原子が誘起する非共有結合の引力相互作用およびこれらの相互作用が重合反応に与える影響について議論する.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.2018-0028