肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症の中期遠隔期成績

肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症の初回手術の成績は不良である.また遠隔成績の報告も少ない.今回,当院で施行した肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症に対する根治術後中期遠隔期成績の検討を行った.対象は1995年から1999年までに手術を行った5例で,手術時平均年齢,手術時平均体重と術前PA indexはそれぞれ9カ月(1~29カ月),5.2kg(3.6~9.1kg),1,910(496~3,308)であった.5例中3例は術前PA indexが2,000をこえており呼吸器症状を認めていた,さらにうち2例は術前から人工呼吸器による呼吸管理が必要であった.この3例は乳児期に手術を行う必要があった.根治術は...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 37; no. 2; pp. 78 - 81
Main Authors 上松, 耕太, 青木, 満, 内藤, 祐次, 藤原, 直
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2008
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症の初回手術の成績は不良である.また遠隔成績の報告も少ない.今回,当院で施行した肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症に対する根治術後中期遠隔期成績の検討を行った.対象は1995年から1999年までに手術を行った5例で,手術時平均年齢,手術時平均体重と術前PA indexはそれぞれ9カ月(1~29カ月),5.2kg(3.6~9.1kg),1,910(496~3,308)であった.5例中3例は術前PA indexが2,000をこえており呼吸器症状を認めていた,さらにうち2例は術前から人工呼吸器による呼吸管理が必要であった.この3例は乳児期に手術を行う必要があった.根治術は心室中隔欠損(VSD)閉鎖,右室流出路再建と肺動脈形成を行い,肺動脈形成方法は前壁の切除と後壁の縫縮を行った.右室流出路再建には,肺動脈拡張が著しく(PA index>2,000)呼吸器症状を呈している3例に自己心膜の弁付き心外導管を,それ以外には1弁付きtransannular patchを用いた.全例耐術し,遠隔期死亡は1例で,外来で経過観察中に呼吸器症状を呈したのち突然死した.生存例(follow up平均86カ月)は全例NYHA心機能分類class Iで呼吸器症状は認めなかった.術後平均70カ月後に施行したカテーテル検査では,平均右室駆出率(RVEF),右室圧(RVp),右室圧/左室圧(RVp/LVp),肺動脈圧(PAP)はそれぞれ51%(38~57%),81mmHg(36~105mmHg),0.87(0.41~1.11),35mmHg(25~52mmHg)で,三尖弁逆流(TR)は I度(1例),II度(3例),肺動脈弁逆流(PR)は I度(2例),II度(2例)と,右室流出路狭窄と右室圧の上昇を認めるものの右心機能は保たれていた.また,術後平均PA indexは1,059(572~1,853),術後PA index /術前PA indexは平均0.72(0.35~1.15)と術前肺動脈拡張が著しく呼吸器症状を呈する群とそうでない群ともに肺動脈の再拡張は認めなかった.再手術は右室流出路狭窄による右室圧上昇に対し右室流出路再建術を生存例4例中3例に行ったが,3例中2例は心外導管を用いた症例で1例はtransannular patchで再建した症例であった.肺動脈前壁切除,後壁縫縮と弁付き心外導管または1弁付きtransannular patchによる右室流出路再建を行うことで,術後遠隔期に再手術が必要となるが,肺動脈の再拡張はなく術後中期遠隔期成績は良好であった.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.37.78