肝細胞癌を伴うアルコール多飲者にみられた限局性肝細胞泡沫変性
微細脂肪滴蓄積による肝細胞腫大, いわゆる肝細胞の泡沫変性が限局性にみられたアルコール多飲者症例 (60歳, 男性, 元大工, 日本酒2合以上/日, 41年間) を経験した. 肝臓 (1790g) は肝線維症の像を呈しており, 右葉には被膜を有する直径4~10cmの中分化型肝細胞癌の結節が3個認められた. 右葉外側被膜下に, 直径約1cmと2~3cmの周囲組織とは比較的明瞭に境界された黄白色病巣が認められた. この病巣は多数の微細脂肪滴 (oil red-O陽性) の蓄積によって腫大した肝細胞で構成されており, アルコール性肝障害の肝細胞の泡沫変性に類似していた. この限局性肝細胞泡沫変性巣は...
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Published in | 肝臓 Vol. 41; no. 7; pp. 490 - 495 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
2000
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Subjects | |
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ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.41.490 |
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Summary: | 微細脂肪滴蓄積による肝細胞腫大, いわゆる肝細胞の泡沫変性が限局性にみられたアルコール多飲者症例 (60歳, 男性, 元大工, 日本酒2合以上/日, 41年間) を経験した. 肝臓 (1790g) は肝線維症の像を呈しており, 右葉には被膜を有する直径4~10cmの中分化型肝細胞癌の結節が3個認められた. 右葉外側被膜下に, 直径約1cmと2~3cmの周囲組織とは比較的明瞭に境界された黄白色病巣が認められた. この病巣は多数の微細脂肪滴 (oil red-O陽性) の蓄積によって腫大した肝細胞で構成されており, アルコール性肝障害の肝細胞の泡沫変性に類似していた. この限局性肝細胞泡沫変性巣は, 肝被膜下に存在し, その周囲の門脈枝に内膜の疎な線維性肥厚による著しい狭窄がみられたことから, 局所的門脈血流障害による低酸素状態とアルコール性肝障害が本病巣の形成に関与していると考えられる. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.41.490 |