アメーバ性肝膿瘍を契機に診断した男性同性愛者のHIV感染症の一例

症例は40代男性.入院2週間前から心窩部痛,背部痛を生じ,1週間前より微熱,全身倦怠感も伴うようになった.その後,40℃の発熱を来たし,体動困難となったため,救急車で当院搬送となった. 来院時,心窩部で肝臓を触知,軽度の圧痛を伴っていた.血液検査では高い炎症所見と軽度の肝酵素の上昇を認めた.腹部造影CT検査で肝左葉に70㎜大の境界明瞭,分葉形の低吸収域を認め,肝膿瘍と考えられた.経皮経肝膿瘍ドレナージを行い,赤褐色調の排液を認めた.細菌性肝膿瘍を考えセフメタゾール投与を開始したが,3日後にも解熱しないため,アメーバ性肝膿瘍を疑いメトロニダゾール2g/日の経口投与を開始,翌日から速やかに解熱した...

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Published in山口医学 Vol. 61; no. 1+2; pp. 57 - 61
Main Authors 原田, 俊夫, 河岡, 徹, 平木, 桜夫, 福田, 進太郎, 松隈, 聰, 長島, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 01.05.2012
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ISSN0513-1731
1880-4462
DOI10.2342/ymj.61.57

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Summary:症例は40代男性.入院2週間前から心窩部痛,背部痛を生じ,1週間前より微熱,全身倦怠感も伴うようになった.その後,40℃の発熱を来たし,体動困難となったため,救急車で当院搬送となった. 来院時,心窩部で肝臓を触知,軽度の圧痛を伴っていた.血液検査では高い炎症所見と軽度の肝酵素の上昇を認めた.腹部造影CT検査で肝左葉に70㎜大の境界明瞭,分葉形の低吸収域を認め,肝膿瘍と考えられた.経皮経肝膿瘍ドレナージを行い,赤褐色調の排液を認めた.細菌性肝膿瘍を考えセフメタゾール投与を開始したが,3日後にも解熱しないため,アメーバ性肝膿瘍を疑いメトロニダゾール2g/日の経口投与を開始,翌日から速やかに解熱した. 肝膿瘍内容液の培養では赤痢アメーバを検出できなかったが,血清抗体検査でアメーバ性肝膿瘍の診断に至った. 入院24日目に施行したCT検査では膿瘍腔はほぼ消失していたため,ドレーンを抜去,入院33日目に軽快退院となった. 入院中に施行したHIVスクリーニング検査の結果は陽性で,また患者本人から男性同性愛者であるとの情報が得られた. 肝膿瘍の原因として赤痢アメーバを鑑別に挙げることは重要であるが,男性同性愛者にみる腸管感染症(Gay bowel syndrome)からHIVの可能性を考え,未診断のHIVを拾い上げる努力が,さらに重要なことと考えられた.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.61.57