学校保健における諸課題とその対応 一側性難聴児に対する聴覚補償と学校における対応

一側性難聴児は健聴耳での聞き取りが良いために, 乳幼児期の言語獲得や日常生活において支障がないと考えられてきた. これまでの一側性難聴児に対する学校での対応は, 座席を教室の前方にして聞こえる方の耳を教師に向ける配置にするのが望ましいとする程度であった. しかし, 一側性難聴児は難聴側から聞こえにくいことに加え, 両耳聴ができないために, 音源定位や騒音下での聞き取りが困難である. 学童期の集団学習の場である学校の教室では, 椅子を引く音やページをめくる音などの暗騒音やほかの児の声などにより, 55~65dBSPL程度の騒音があると報告されている. また, 教室では教師と生徒の間には距離がある...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 124; no. 7; pp. 1030 - 1031
Main Author 島田, 亜紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 20.07.2021
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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Summary:一側性難聴児は健聴耳での聞き取りが良いために, 乳幼児期の言語獲得や日常生活において支障がないと考えられてきた. これまでの一側性難聴児に対する学校での対応は, 座席を教室の前方にして聞こえる方の耳を教師に向ける配置にするのが望ましいとする程度であった. しかし, 一側性難聴児は難聴側から聞こえにくいことに加え, 両耳聴ができないために, 音源定位や騒音下での聞き取りが困難である. 学童期の集団学習の場である学校の教室では, 椅子を引く音やページをめくる音などの暗騒音やほかの児の声などにより, 55~65dBSPL程度の騒音があると報告されている. また, 教室では教師と生徒の間には距離があるために, 教師の声が減衰する. このことから, 一側性難聴児にとって教室は教師の声を聞き取りにくい環境である. 実際, 教室での座席配置を指導した一側性難聴児の中には, 授業中に教師の指示が分からずに周りの児の行動を確認するためにキョロキョロしている児や, 授業中に周囲が騒がしいと教師の声が聞き取りにくい時があると訴える児を経験していた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.124.1030