痛みの制御に関する実験臨床心理学的研究(3) : 自己管理的方略の効果についての多面的検討

本研究では,痛み反応における個人差を考慮に入れながら,自己管理するスライドの鑑賞という方略が,痛みの制御に及ぼす効果について,多面的かつ精細に検討した。男子大学生を被験者として,自己管理するスライドを鑑賞する実験条件とスライドを鑑賞しない統制条件のもとで,冷水中に利き手を浸けさせた。両条件の効果を比較するための主要な指標は,トレランスタイム,マグニチュード推定値(浸水中の各時点で感ずる痛みの強さ),方略の使用,非使用の効果についての主観的評定値である。実験の結果,全ての主要な指標において,実験条件の方が統制条件よりすぐれており,自己管理するスライドの鑑賞という方略が痛みの制御のために極めて効果...

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Published in行動療法研究 Vol. 11; no. 2; pp. 109 - 118
Main Authors 上里, 一郎, 根建, 金男, 日野, 智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本認知・行動療法学会 31.03.1986
日本行動療法学会
Subjects
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ISSN0910-6529
2424-2594
DOI10.24468/jjbt.11.2_109

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Summary:本研究では,痛み反応における個人差を考慮に入れながら,自己管理するスライドの鑑賞という方略が,痛みの制御に及ぼす効果について,多面的かつ精細に検討した。男子大学生を被験者として,自己管理するスライドを鑑賞する実験条件とスライドを鑑賞しない統制条件のもとで,冷水中に利き手を浸けさせた。両条件の効果を比較するための主要な指標は,トレランスタイム,マグニチュード推定値(浸水中の各時点で感ずる痛みの強さ),方略の使用,非使用の効果についての主観的評定値である。実験の結果,全ての主要な指標において,実験条件の方が統制条件よりすぐれており,自己管理するスライドの鑑賞という方略が痛みの制御のために極めて効果的であることが示された。この方略の効果は,個人差を考慮に入れた場合の結果からも裏づけられた。今後,痛み反応における個人差と,それを規定する個人内要因との関係を精査する余地がある。
ISSN:0910-6529
2424-2594
DOI:10.24468/jjbt.11.2_109