大量輸血症例における患者フィブリノゲン濃度と輸血量についての検討

【はじめに】諸外国では,出血などに伴う後天的なフィブリノゲン低下状態に対し,フィブリノゲン(Fib)製剤,クリオプレシピテートの使用によって輸血量を削減できることが報告されている.しかるに,本邦においてはこのような症例に対しては新鮮凍結血漿(FFP)のみが保険適用である.今回我々は,大量輸血症例における患者Fib濃度と輸血量について調査したので報告する. 【対象と方法】当院で2010年9月から2011年8月までの間に輸血した症例のうち,1日の赤血球使用量が10単位以上の症例を大量輸血例と定義して,同日に使用した製剤種類別の輸血量とFib濃度の輸血前1日間の最低値を調査した. 【結果】調査期間中...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 59; no. 1; pp. 38 - 42
Main Authors 阿南, 昌弘, 大久保, 光夫, 大木, 浩子, 今井, 厚子, 野呂, 光恵, 森, 絵理子, 前田, 平生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2013
日本輸血・細胞治療学会
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Summary:【はじめに】諸外国では,出血などに伴う後天的なフィブリノゲン低下状態に対し,フィブリノゲン(Fib)製剤,クリオプレシピテートの使用によって輸血量を削減できることが報告されている.しかるに,本邦においてはこのような症例に対しては新鮮凍結血漿(FFP)のみが保険適用である.今回我々は,大量輸血症例における患者Fib濃度と輸血量について調査したので報告する. 【対象と方法】当院で2010年9月から2011年8月までの間に輸血した症例のうち,1日の赤血球使用量が10単位以上の症例を大量輸血例と定義して,同日に使用した製剤種類別の輸血量とFib濃度の輸血前1日間の最低値を調査した. 【結果】調査期間中の濃厚赤血球(RCC)およびFFPの総輸血量および件数は,それぞれ16,146単位,5,125件;10,120単位,1,547件であった.大量輸血症例におけるRCC輸血量は3,294単位(20.4%),188件(3.7%)であった.FFPは 3,092単位(30.6%),177件(11.4%)であった.Fib 150mg/dl未満の大量輸血症例で使用されたRCCは1,842単位で,総使用量の11%であった.FFPは1,918単位(19%)であった. 【考察】低Fib血症の治療としてFFPを使用した場合大量に必要となり,肺水腫などの原因となりうる.大量輸血が想定される症例ではFib濃度を測定し,重症時はFib製剤の投与を検討する必要があると思われる.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.59.38