経鼻内視鏡頭蓋底手術の進歩 耳鼻咽喉科の立場から
頭蓋底外科はこれまでオープンサージェリーが主流であったが, 最近になって経鼻内視鏡頭蓋底手術 (endoscopic endonasal skull base surgery: EESS) が行われるようになってきた. EESS は, 正常な脳を触らずに頭蓋底へアプローチできること, 頭部や顔面に傷が残らないことが大きなメリットである. 実際の手術は, アプローチ, 腫瘍摘出, 頭蓋底再建の3段階に分けられる. はじめに耳鼻咽喉科医が内視鏡下副鼻腔手術に準じて外鼻孔から頭蓋底に通じる surgical corridor をつくる. 腫瘍摘出の局面では, 脳外科医が参加して four hand...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 119; no. 6; pp. 846 - 853 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.06.2016
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.119.846 |
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Summary: | 頭蓋底外科はこれまでオープンサージェリーが主流であったが, 最近になって経鼻内視鏡頭蓋底手術 (endoscopic endonasal skull base surgery: EESS) が行われるようになってきた. EESS は, 正常な脳を触らずに頭蓋底へアプローチできること, 頭部や顔面に傷が残らないことが大きなメリットである. 実際の手術は, アプローチ, 腫瘍摘出, 頭蓋底再建の3段階に分けられる. はじめに耳鼻咽喉科医が内視鏡下副鼻腔手術に準じて外鼻孔から頭蓋底に通じる surgical corridor をつくる. 腫瘍摘出の局面では, 脳外科医が参加して four hands surgery を行う. 欠損状況に応じて, さまざまな方法で頭蓋底を再建する. 鼻中隔粘膜弁や頭蓋骨膜弁などの pedicle flap が開発され, EESS の安全性が向上した. EESS の対象として, 下垂体腫瘍, 髄膜腫, 脊索腫などの脳外科疾患が多い. 耳鼻咽喉科疾患として, 鼻性髄液漏, 視神経管骨折, 鼻副鼻腔腫瘍, 錐体尖コレステリン肉芽腫などがある. minimally invasive から始まった EESS であるが, 現在では minimal access & maximally aggressive という表現が適切である. 一方, EESS の限界を見極めてオープンサージェリーに変更できる体制を整えておくことも重要である. 難治性疾患が多い頭蓋底領域に, 内視鏡が導入され約20年が経とうとしている. 脳外科とのチームで行う EESS は患者中心医療の理想型である. 多彩なサブスペシャリティーが参入しさらに発展していくことが期待される. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.119.846 |