レジオネラに対する貪食細胞の反応

食細胞内増殖菌であるLegionella pneumophilaの特性をヒト好中球および単球を用いて検討した.L.pneumophila serogroup 1 (80-045株) は, E.coliに比較して, 好中球, 単球に貪食されにくく, 抗体と補体の両者の存在下ではじめて良好な貪食能がみられるようになった.しかし, 殺菌されにくく, 特にモルモットを通過せしめたvirulent株は人工培地で継代したavirulent株よりも抵抗性であった.E.coli貪食時にみられるような活性酸素産生は, Legionella貪食時にはほとんどみられなかった.接種菌量の増加や抗体の添加によっても活性...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 61; no. 12; pp. 1429 - 1442
Main Authors 斎藤, 厚, 朝長, 昭光, 門田, 淳一, 平谷, 一人, 福島, 喜代康, 森, 賢治, 重野, 芳輝, 河野, 茂, 広田, 正毅, 原, 耕平, 朝野, 和典, 山口, 恵三, 石井, 良和, 市川, 正孝, 高野, 邦雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.12.1987
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Summary:食細胞内増殖菌であるLegionella pneumophilaの特性をヒト好中球および単球を用いて検討した.L.pneumophila serogroup 1 (80-045株) は, E.coliに比較して, 好中球, 単球に貪食されにくく, 抗体と補体の両者の存在下ではじめて良好な貪食能がみられるようになった.しかし, 殺菌されにくく, 特にモルモットを通過せしめたvirulent株は人工培地で継代したavirulent株よりも抵抗性であった.E.coli貪食時にみられるような活性酸素産生は, Legionella貪食時にはほとんどみられなかった.接種菌量の増加や抗体の添加によっても活性酸素の産生量の増加は, Legionellaの場合はほとんどみられず, avirulent株の大量接種の場合のみ活性酸素の産生量がわずかに増加した.特異抗体存在下に好中球が貪食した上記三種の菌株の電顕的観察では, いずれの菌もphagosome内にとりこまれていたが, E.coliやavirulent株の場合はphagosome膜と菌との間隙は広く, 中に1~数個の菌を認め, またphagosome膜に密着して, multivesicular typeのlysosomeが明瞭に観察された.Virulent株ではphagosome膜と菌との間隙は狭く, ほとんど1個の菌しかみられず, またphagosome周辺にはミトコンドリアや種々の形のlysosome穎粒が観察された.Phagosomeとlysosomeのfusionを示唆する像はE.coliの場合が最も良く観察され, 次いでavirulent株でも頻度は少なかったが, 同様の所見がみられた.しかし, virulentの株ではこのような像をほとんどみることができなかった.以上の成績をまとめると, Legionellaは食細胞に貪食されにくいが, 抗体と補体の存在下では貪食されるようになる.好中球に極めてわずか殺菌されるものの単球では全く殺菌されず, E.coli貪食時にみられる活性酸素の産生もほとんどみられない.貪食後のphagosomeとlysosomeのfusionも抑制されていた.このように, 食細胞の殺菌構造の作動をLegiomllaが抑制している現象が観察されたが, その詳細なメカニズムについては今後の検討が必要である.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.61.1429