創傷被覆材への応用にむけたポリ(トリメチレンカーボネート)を基盤とした環境応答型ポリマー

メディカルポリマーの開発には,濡れ性やタンパク質の固定化などの表面特性の調律と環境変化に対する応答制御が重要である.本研究では,迅速な環境応答性を発現するポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)を基盤とした高分子を設計した.PTMC と親水性のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)との共重合体やコレステロール(CH)誘導体であるリトコール酸(LA)やコール酸(CA)を末端に有する PTMC において,乾燥状態と湿潤状態の環境変化に規定された表面偏析について検討した.mPEG 鎖を有する PTMC では,水に接触させると mPEG 鎖が迅速に表面偏析して親水性を示すようになり,...

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Published in高分子論文集 Vol. 69; no. 3; pp. 89 - 101
Main Author 渡邉, 順司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 2012
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ISSN0386-2186
1881-5685
DOI10.1295/koron.69.89

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Summary:メディカルポリマーの開発には,濡れ性やタンパク質の固定化などの表面特性の調律と環境変化に対する応答制御が重要である.本研究では,迅速な環境応答性を発現するポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)を基盤とした高分子を設計した.PTMC と親水性のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(mPEG)との共重合体やコレステロール(CH)誘導体であるリトコール酸(LA)やコール酸(CA)を末端に有する PTMC において,乾燥状態と湿潤状態の環境変化に規定された表面偏析について検討した.mPEG 鎖を有する PTMC では,水に接触させると mPEG 鎖が迅速に表面偏析して親水性を示すようになり,この親水化に要する時間は mPEG 鎖の鎖長に依存し,鎖長が長いものほど迅速であった.CH 誘導体を末端に有する PTMC においても,環境に応答した表面偏析が認められた.とくに,カルボキシル基を有する LA や CA の場合では,乾燥状態の方が湿潤状態よりも親水的であることが明らかとなった.湿潤状態では,表面偏析していた CH 誘導体が膜内部に潜り込むのに伴い,CH 誘導体に結合している極性基であるカルボキシル基も同時に潜り込むため,最表面の極性低下による疎水化が起こったためであると考えられた.このように PTMC を基盤として,高分子鎖あるいは機能性分子の表面偏析が迅速に制御でき,メディカルポリマーとしての応用研究が期待される.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.69.89