経気管吸引法でいわゆる非病原性Neisseria属菌を検出した呼吸器感染症の検討

一般に非病原性とされるNeisseria属菌を経気管吸引法 (TTA) で検出した呼吸器感染症49例54回について臨床的に検討した. 本菌の検出頻度は呼吸器感染症全体では15.7%, 疾患別では肺炎で17.8%, 急性気管支炎で15.4%, 慢性下気道感染症で14.0%であった.本菌の単独検出例はなく全例が複数菌検出であり, 同時検出菌はα-Streptococcus属菌が75.9%と圧倒的に多く, Haemophilus influenzae (25.9%), 嫌気性菌 (22.2%) がこれに次いだ. 年齢層別の本菌の検出比率は45歳以上で高かったが, 必ずしも高齢になるほど増加する傾向は...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 72; no. 11; pp. 1171 - 1175
Main Authors 前田, 光一, 古西, 満, 三笠, 桂一, 眞島, 利匡, 植田, 勝廣, 善本, 英一郎, 坂本, 正洋, 濱田, 薫, 澤木, 政好, 佐野, 麗子, 増谷, 喬之, 成田, 亘啓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.11.1998
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Summary:一般に非病原性とされるNeisseria属菌を経気管吸引法 (TTA) で検出した呼吸器感染症49例54回について臨床的に検討した. 本菌の検出頻度は呼吸器感染症全体では15.7%, 疾患別では肺炎で17.8%, 急性気管支炎で15.4%, 慢性下気道感染症で14.0%であった.本菌の単独検出例はなく全例が複数菌検出であり, 同時検出菌はα-Streptococcus属菌が75.9%と圧倒的に多く, Haemophilus influenzae (25.9%), 嫌気性菌 (22.2%) がこれに次いだ. 年齢層別の本菌の検出比率は45歳以上で高かったが, 必ずしも高齢になるほど増加する傾向は認めなかった. 本菌検出の背景因子として明らかな誤嚥が37%, 医原性要因が16%, 重喫煙歴が61%にみられた. 誤嚥が明らかでない症例のうち検出時に38℃以上の発熱またはPaO2 70torr未満の低酸素血症があった例は非高齢者より高齢者の方が多い傾向を認めた. いわゆる非病原性Neisseria属菌のTTAでの検出には上気道から下気道への細菌の落下を防御・排除できない宿主状態の関与が考えられるが, それには顕性あるいは不顕性誤嚥の他に, 喫煙, 基礎疾患などによる粘液線毛輸送機能の低下や全身状態の悪化も重要と考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.72.1171