長崎市内で発生したShigella sonneiによる集団赤痢について

細菌性赤痢の集団発生事例を経験した. 有症者数は821名で, 467名 (56.9%) から菌が検出され, 346名 (42.1%) が入院した. 投薬のみで, 自宅治療を行った患者は121名で, 二次感染者数は5名 (1.1%) であった. このうち当院を受診した96名を対象に臨床症状の解析および分離菌の細菌学的検討を行い, また長崎市保健環境試験所から分与を受けた環境分離株についても同様の検討を行った. 患者の主訴は下痢, 腹痛, 発熱で, 便性は水様便が多く, 血便は47名中3名 (6.4%) と少なかった. 治療はlevofloxacin (LVFX) 300mg/日, 5日間投与で行...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in感染症学雑誌 Vol. 74; no. 12; pp. 1004 - 1011
Main Authors 須山, 尚史, 浜本, 昭裕, 石井, 良和, 河野, 茂, 木下, 和久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.12.2000
Online AccessGet full text
ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.74.1004

Cover

More Information
Summary:細菌性赤痢の集団発生事例を経験した. 有症者数は821名で, 467名 (56.9%) から菌が検出され, 346名 (42.1%) が入院した. 投薬のみで, 自宅治療を行った患者は121名で, 二次感染者数は5名 (1.1%) であった. このうち当院を受診した96名を対象に臨床症状の解析および分離菌の細菌学的検討を行い, また長崎市保健環境試験所から分与を受けた環境分離株についても同様の検討を行った. 患者の主訴は下痢, 腹痛, 発熱で, 便性は水様便が多く, 血便は47名中3名 (6.4%) と少なかった. 治療はlevofloxacin (LVFX) 300mg/日, 5日間投与で行われ, すべて除菌できた. また環境調査の結果, 患者が多発した某大学内の井戸水からShigella sonnei (S. sonnei) が検出され, 集団赤痢の原因は井戸水と断定された. 大学近辺のアパート浄化槽からも分離されたが, 井戸水との関与は否定された. 菌の生化学的, 血清学的および酵素学的性状は糞便由来株, 環境由来株ともに一致していた. 薬剤感受性試験では, 治療に使用したLVFXと同系のofloxacinはすべての株に感受性を示したが, 浄化槽由来株および糞便由来3株の計4株がfosfomycinに64μg/ml以上の耐性を示した. なお, パルスフィールドゲル電気泳動による遺伝学的検討の結果, 臨床材料由来株と環境由来株は, 極めて近縁関係にあることが判明した.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.74.1004