地域在住高齢者の食行動のセルフエフィカシーと食物摂取状況との関連

近年, 栄養教育は行動科学の理論に基づいた, 適切な食行動の実践と継続を促す教育へと変遷してきた。本研究の目的は, 高齢者への望ましい栄養教育のあり方を検討するため, 食行動のセルフエフィカシーと食物摂取状況との関係を明らかにすることである。 高齢者42名 (平均年齢74. 9±標準偏差4. 7歳) を対象に, 食行動のセルフエフィカシー及び食物摂取状況について自記式質問紙による調査を行った。高齢である対象者の負担とこれに伴う過誤を最小限に抑えるため, 食物摂取状況は1日分の食事記録 (料理名や食品名とその概量) にて算出した。 その結果は以下の通りである。 1) 「食品購入時に栄養成分表示を...

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Published in日本食生活学会誌 Vol. 21; no. 2; pp. 107 - 114
Main Authors 田中, あゆ子, 千歳, 万里, 加藤, 則子, 北山, 由起子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本食生活学会 2010
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ISSN1346-9770
1881-2368
DOI10.2740/jisdh.21.107

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Summary:近年, 栄養教育は行動科学の理論に基づいた, 適切な食行動の実践と継続を促す教育へと変遷してきた。本研究の目的は, 高齢者への望ましい栄養教育のあり方を検討するため, 食行動のセルフエフィカシーと食物摂取状況との関係を明らかにすることである。 高齢者42名 (平均年齢74. 9±標準偏差4. 7歳) を対象に, 食行動のセルフエフィカシー及び食物摂取状況について自記式質問紙による調査を行った。高齢である対象者の負担とこれに伴う過誤を最小限に抑えるため, 食物摂取状況は1日分の食事記録 (料理名や食品名とその概量) にて算出した。 その結果は以下の通りである。 1) 「食品購入時に栄養成分表示を利用する」の質問に対し, 「かなりできる」と回答した者は15%に満たなかった。 2) 食物摂取状況は, 全ての料理区分において食物摂取目安外であった。とくに, 果物, 牛乳・乳製品, 菓子・嗜好飲料は摂取目安を大きく上回った。 3) 食行動のセルフエフィカシーについては, 「野菜をたくさん食べる」の1項目を除いて食物摂取状況との間に有意な関連が見られなかった。 4) 副菜の摂取適正群及び牛乳・乳製品の非適正群は, 食行動のセルフエフィカシーのすべての項目のSE高群に占める割合が高かった。 5) 食行動のセルフエフィカシーが高く食意識も高い群は, 牛乳・乳製品の摂取が非適正 (過剰) であった。 6) 多世代同居世帯は独居世帯及び夫婦世帯に比べ, 「野菜をたくさん食べる」, 「油脂や油っぽい料理を控える」の食行動のセルフエフィカシーが有意に低く, 副菜の摂取の適正群に占める割合も有意に低かった。 以上の結果より, 高齢者の食行動のセルフエフィカシーを適切に測る尺度開発が必要であると考察した。また, 高齢者は食知識が欠如または誤った食知識を有する可能性があるため, 高齢者への栄養教育の機会を創出する必要があり, その内容には間食の適切な摂取方法や栄養成分表示の活用方法を盛り込み, また, 高齢者本人だけでなく, その家族や調理者を巻き込んだ教育が必要であると考察した。
ISSN:1346-9770
1881-2368
DOI:10.2740/jisdh.21.107