脳卒中と口腔細菌

齲蝕や歯周病などを引き起こす口腔細菌の脳卒中発症への関与が示唆されている.歯周粘膜組織では生体防御が脆弱であり,歯科処置や歯磨き等の刺激で,口腔細菌が血液中に移行し菌血症を引き起こす.なかでもコラーゲン結合蛋白Cnmを発現する齲蝕原性細菌の口腔内保有は,脳内出血に関連する.さらに,口腔細菌は毒性・代謝因子を産生し液性機序で脳卒中の発症に関与しうる.最近になり,口腔細菌の腸管移行による腸内細菌叢のディスバイオシス(細菌構成の異常)を介した免疫機序により脳卒中リスクが高まる可能性も明らかになった.これら3つの機序は互いに影響し合いながら,脳卒中の発症に寄与すると推測されている.このような口腔細菌の...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 112; no. 6; pp. 1027 - 1033
Main Author 猪原, 匡史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.06.2023
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.112.1027

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Summary:齲蝕や歯周病などを引き起こす口腔細菌の脳卒中発症への関与が示唆されている.歯周粘膜組織では生体防御が脆弱であり,歯科処置や歯磨き等の刺激で,口腔細菌が血液中に移行し菌血症を引き起こす.なかでもコラーゲン結合蛋白Cnmを発現する齲蝕原性細菌の口腔内保有は,脳内出血に関連する.さらに,口腔細菌は毒性・代謝因子を産生し液性機序で脳卒中の発症に関与しうる.最近になり,口腔細菌の腸管移行による腸内細菌叢のディスバイオシス(細菌構成の異常)を介した免疫機序により脳卒中リスクが高まる可能性も明らかになった.これら3つの機序は互いに影響し合いながら,脳卒中の発症に寄与すると推測されている.このような口腔細菌の脳卒中病態への関与を鑑みれば,口腔ケアによる脳卒中低減効果が期待される.未だエビデンスレベルの高い介入研究は存在しないが,今後,脳卒中低減を目指した双方向性の医科―歯科連携が望まれる.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.112.1027