ブタガラス化保存胚盤胞を用いた非外科的移植方法の改善

本研究は,生産現場でのブタ胚移植を実施することを目的に,ガラス化保存胚の非外科的移植について検討を行った。供試胚はガラス化保存した胚盤胞~拡張胚盤胞を用いた。受胚豚は未経産豚(8~10ヶ月齢)35頭を用いた。非外科的移植器具には,市販の深部注入用移植器(器具A),深部注入用の試作品(器具B)およびウシ用胚移植器を改良した子宮体移植用の試作品(器具C)を用いた。試験1では,移植部位の確認のため,各移植器をそれぞれ受胚豚5頭に挿入した後,全身麻酔下で開腹手術を行い移植器具の先端部の位置(移植部位)を確認した。その後,ガラス化保存胚を移植した。1頭あたりの移植胚数は1腹採取分(14~16個)で実施し...

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Published in日本養豚学会誌 Vol. 57; no. 4; pp. 129 - 137
Main Authors 三角, 浩司, 江川, 紗智子, 御澤, 弘靖, 平山, 祐理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本養豚学会 22.12.2020
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Summary:本研究は,生産現場でのブタ胚移植を実施することを目的に,ガラス化保存胚の非外科的移植について検討を行った。供試胚はガラス化保存した胚盤胞~拡張胚盤胞を用いた。受胚豚は未経産豚(8~10ヶ月齢)35頭を用いた。非外科的移植器具には,市販の深部注入用移植器(器具A),深部注入用の試作品(器具B)およびウシ用胚移植器を改良した子宮体移植用の試作品(器具C)を用いた。試験1では,移植部位の確認のため,各移植器をそれぞれ受胚豚5頭に挿入した後,全身麻酔下で開腹手術を行い移植器具の先端部の位置(移植部位)を確認した。その後,ガラス化保存胚を移植した。1頭あたりの移植胚数は1腹採取分(14~16個)で実施した。試験2では,各移植器をそれぞれ立位無麻酔の受胚豚5頭に挿入した後,ガラス化保存胚を移植した。1頭あたりの移植胚数は1腹採取分(15~17個)で実施した。試験1の結果,器具A区では,1頭に子宮穿孔が見られたため,この受胚豚には移植を実施しなかった。他の受胚豚において,移植器の先端は子宮体および子宮角分岐部付近であった。胚を移植した受胚豚4頭中2頭が受胎·分娩し合計8頭の子豚を生産した。器具B区では,受胚豚5頭において,移植器の先端は子宮角分岐部付近であった。受胚豚5頭中3頭が受胎·分娩し合計13頭の子豚を生産した。器具C区では,受胚豚5頭において,移植器の先端は子宮頸管出口付近の子宮体であった。5頭すべて不受胎であった。試験2の結果,器具A区で受胚豚5頭中3頭が受胎したがうち2頭が流産した。残りの1頭から5頭の子豚を生産した。器具B区では,5頭中3頭が受胎·分娩し合計16頭の子豚を生産した。器具Cでは,5頭中3頭が受胎·分娩し合計14頭の子豚を生産した。今回の結果から,無麻酔下の立位状態においては,ブタガラス化保存胚を子宮体へ非外科的に移植することで,外科的移植と同等の効率で産子が得られることが明らかとなった。
ISSN:0913-882X
1881-655X
DOI:10.5938/youton.57.4_129