横隔膜再発巣から下大静脈内腫瘍栓を形成した肝細胞癌の1例

症例は70歳,男性.C型慢性肝炎に肝細胞癌(以下HCC)を発症.初回手術で肝S4核出術を施行された.その7カ月後に限局性の腹膜播腫再発を認め,再度摘出術が施行された.その後,外来経過観察中CT上肝右葉表面ドーム直下に直径3cmの単発播種結節と横隔膜静脈を経由し,下大静脈内に腫瘍栓(長径2cm)を認めた.胸骨縦切開開胸開腹による播種巣切除+腫瘍栓摘出術を施行.術後経過良好にて,第14病日に退院した.その後肝両葉に門脈腫瘍栓を形成し,最終手術より8カ月で肝不全死するまで,腫瘍栓による肺塞栓などの頓死を免れ,Quality of Lifeを維持できた.HCCの腹膜播種,下大静脈腫瘍栓,という2つの重...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 71; no. 10; pp. 2696 - 2700
Main Authors 川合, 亮佑, 平松, 和洋, 加藤, 岳人, 鈴木, 正臣, 柴田, 佳久, 吉原, 基
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2010
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は70歳,男性.C型慢性肝炎に肝細胞癌(以下HCC)を発症.初回手術で肝S4核出術を施行された.その7カ月後に限局性の腹膜播腫再発を認め,再度摘出術が施行された.その後,外来経過観察中CT上肝右葉表面ドーム直下に直径3cmの単発播種結節と横隔膜静脈を経由し,下大静脈内に腫瘍栓(長径2cm)を認めた.胸骨縦切開開胸開腹による播種巣切除+腫瘍栓摘出術を施行.術後経過良好にて,第14病日に退院した.その後肝両葉に門脈腫瘍栓を形成し,最終手術より8カ月で肝不全死するまで,腫瘍栓による肺塞栓などの頓死を免れ,Quality of Lifeを維持できた.HCCの腹膜播種,下大静脈腫瘍栓,という2つの重大な転移に対する外科的治療の適応には議論があるが,有効な内科的治療はなく,症例によっては予後を改善する可能性がある.文献的考察を加え報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.71.2696