肝切除および肝外短絡路結紮により治療した肝内および肝外門脈静脈短絡路の1例

症例は75歳,女性.早期胃癌に対する幽門側胃切除術後6年目,転倒による右大腿骨骨折を契機に時々意識障害が出現,以後慢性期病院での寝たきり生活を送っていた.平成19年5月,Mallory Weiss症候群による吐血精査中にアンモニア高値(258μg/dl)および肝内門脈静脈短絡路が発見され,当科に紹介入院.諸検査にて肝前区域に2つの門脈静脈短絡路と上行結腸周囲静脈――下大静脈間の肝外短絡路が同定された.精査中の尿路感染症による敗血症をエンドトキシン吸着療法等で治療し,肝前区域切除および肝外短絡路結紮術を施行した.切除肝組織には炎症や繊維化の所見を認めなかった.術後血清アンモニア値は120μg/d...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 71; no. 12; pp. 3191 - 3196
Main Authors 稲葉, 圭介, 福本, 和彦, 今野, 弘之, 森田, 剛文, 鈴木, 昌八, 坂口, 孝宣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2010
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.71.3191

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Summary:症例は75歳,女性.早期胃癌に対する幽門側胃切除術後6年目,転倒による右大腿骨骨折を契機に時々意識障害が出現,以後慢性期病院での寝たきり生活を送っていた.平成19年5月,Mallory Weiss症候群による吐血精査中にアンモニア高値(258μg/dl)および肝内門脈静脈短絡路が発見され,当科に紹介入院.諸検査にて肝前区域に2つの門脈静脈短絡路と上行結腸周囲静脈――下大静脈間の肝外短絡路が同定された.精査中の尿路感染症による敗血症をエンドトキシン吸着療法等で治療し,肝前区域切除および肝外短絡路結紮術を施行した.切除肝組織には炎症や繊維化の所見を認めなかった.術後血清アンモニア値は120μg/dl未満で変動したが,意識障害は生じなくなり,良好に経過した.本症例は病態,治療等示唆に富む症例で,今後,肝内門脈静脈短絡路症例は肝外短絡路の存在に留意すべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.71.3191