虚血性心筋症を合併した高齢者の異時性多発大腸癌の1手術例
症例は83歳,男性.Stage IのS状結腸癌手術の11年後に呼吸困難を主訴に近医を受診した.胸部X線写真でうっ血性心不全と診断され,心電図と心臓超音波検査から拡張型心筋症が疑われた.貧血があり,消化管精査を行った.直腸S状部に2型腫瘍があり,生検で腺癌と診断された.心不全が改善したため,全身麻酔下にHartmann手術を行った.腫瘍はSS,N1,H0,P0,M0,Stage IIIa,低分化腺癌であった.術中はホスホジエステラーゼIII阻害薬,抗不整脈薬を使用し,術後は輸液量の制限と利尿剤投与を行い,心不全の増悪なく経過した.術後に施行した心臓核医学検査で虚血性心筋症が疑われた.薬剤治療で心...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 11; pp. 2931 - 2935 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2008
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.69.2931 |
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Summary: | 症例は83歳,男性.Stage IのS状結腸癌手術の11年後に呼吸困難を主訴に近医を受診した.胸部X線写真でうっ血性心不全と診断され,心電図と心臓超音波検査から拡張型心筋症が疑われた.貧血があり,消化管精査を行った.直腸S状部に2型腫瘍があり,生検で腺癌と診断された.心不全が改善したため,全身麻酔下にHartmann手術を行った.腫瘍はSS,N1,H0,P0,M0,Stage IIIa,低分化腺癌であった.術中はホスホジエステラーゼIII阻害薬,抗不整脈薬を使用し,術後は輸液量の制限と利尿剤投与を行い,心不全の増悪なく経過した.術後に施行した心臓核医学検査で虚血性心筋症が疑われた.薬剤治療で心症状が安定し,術後第60病日に退院した.術後5年を経過し,心不全の増悪,大腸癌の再発を認めていない.心筋症による心不全を呈する症例でも,心不全がコントロールされていれば,術前評価と周術期管理により,全身麻酔下の大腸癌根治術が可能と思われた. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.69.2931 |