陶器様胆嚢に対する腹腔鏡下摘出術の経験

症例は70歳女性で,8年前より胆石を指摘されており無症状であったが,検診にて胆嚢癌の合併が多い陶器様胆嚢と診断された.CT・超音波検査では,胆嚢壁の石灰化・胆石を認めたが,腫瘍性変化や他の壁の異常は認めず,胆嚢癌合併の可能性は低いと判断し,腹腔鏡下による摘出を試みた.手技上の問題点として,胆嚢が硬く鉗子による把持が困難であり,3mmのリトラクターを追加して,肝床部ごと脱転し,胆嚢頸部の処理を行い得た. また, 肝床部が炎症のため剥離困難であり, 胆嚢壁を開放して胆嚢を摘出し,残った肝床部の胆嚢壁を追加切除した.術後は合併症もなく退院した.切除標本の胆嚢粘膜上皮は完全に脱落しており,悪性所見は認...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 60; no. 2; pp. 495 - 498
Main Authors 中川, 英刀, 蓬池, 康徳, 小林, 研二, 吉川, 宣輝
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本臨床外科学会 1999
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は70歳女性で,8年前より胆石を指摘されており無症状であったが,検診にて胆嚢癌の合併が多い陶器様胆嚢と診断された.CT・超音波検査では,胆嚢壁の石灰化・胆石を認めたが,腫瘍性変化や他の壁の異常は認めず,胆嚢癌合併の可能性は低いと判断し,腹腔鏡下による摘出を試みた.手技上の問題点として,胆嚢が硬く鉗子による把持が困難であり,3mmのリトラクターを追加して,肝床部ごと脱転し,胆嚢頸部の処理を行い得た. また, 肝床部が炎症のため剥離困難であり, 胆嚢壁を開放して胆嚢を摘出し,残った肝床部の胆嚢壁を追加切除した.術後は合併症もなく退院した.切除標本の胆嚢粘膜上皮は完全に脱落しており,悪性所見は認めなかった.陶器様胆嚢の治療において,術前の詳細な検査のうえで胆嚢癌の合併の可能性が低い症例に対しては,まず腹腔鏡下による胆嚢摘出術を試みるべきものであると考える.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.60.2_495