胃癌術後に発症した後天性血友病の1例

後天性血友病は,第VII因子に対する自己抗体が出現することにより発症する重篤な出血性疾患である.症例は81歳,男性.当科にて胃癌に対する幽門側胃切除術を受けた.術後,通過障害を認め保存的に治療していたが,術後52病日より全身の関節痛や皮下出血などの出血傾向が出現し,APTTの延長,第VII因子活性の低下と第VII因子インヒビターを認め,後天性血友病と診断した.活性型プロトロンビン複合体濃縮製剤の投与後,プレドニゾロンとシクロホスファミドを用いた免疫抑制療法を開始し出血傾向は改善したが,突然の吐血と誤嚥により突然死をきたした.後天性血友病は極めて稀な疾患であるが,悪性腫瘍に併発することがあり,原...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 70; no. 10; pp. 3005 - 3010
Main Authors 坂本, 薫, 岡本, 春彦, 田中, 亮, 牧野, 成人, 小野, 一之, 田宮, 洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2009
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Summary:後天性血友病は,第VII因子に対する自己抗体が出現することにより発症する重篤な出血性疾患である.症例は81歳,男性.当科にて胃癌に対する幽門側胃切除術を受けた.術後,通過障害を認め保存的に治療していたが,術後52病日より全身の関節痛や皮下出血などの出血傾向が出現し,APTTの延長,第VII因子活性の低下と第VII因子インヒビターを認め,後天性血友病と診断した.活性型プロトロンビン複合体濃縮製剤の投与後,プレドニゾロンとシクロホスファミドを用いた免疫抑制療法を開始し出血傾向は改善したが,突然の吐血と誤嚥により突然死をきたした.後天性血友病は極めて稀な疾患であるが,悪性腫瘍に併発することがあり,原因不明の出血傾向を認めた場合,本症も念頭におくべきであると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.70.3005