上腸間膜動脈閉塞症を契機に発症した蛋白漏出胃腸症の1例

症例は71歳,女性.腹痛,嘔吐,血便を主訴に来院,精査の結果,腸管壊死を伴わない上腸間膜動脈閉塞症と診断した.抗凝固療法を開始し症状の改善を認めたが,低アルブミン血症が増悪し,アルブミン製剤の頻回投与が必要であった.小腸内視鏡検査や蛋白漏出シンチグラムなどから小腸からの蛋白漏出胃腸症と診断し,小腸中央部から上行結腸の約200cmの腸管を切除した.正常粘膜の脱落を広範囲に認め,白苔が付着し円状潰瘍が多発していた.術後は血清アルブミン値の改善を認めた.上腸間膜動脈閉塞症は重篤な腸管壊死を伴い致命的になることも少なくないが保存的に治療しうることもある.保存的治療後に蛋白漏出胃腸症を併発することはまれ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 71; no. 12; pp. 3103 - 3107
Main Authors 山口, 直哉, 弥政, 晋輔, 澤崎, 直規, 東島, 由一郎, 後藤, 秀成, 松田, 眞佐男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2010
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は71歳,女性.腹痛,嘔吐,血便を主訴に来院,精査の結果,腸管壊死を伴わない上腸間膜動脈閉塞症と診断した.抗凝固療法を開始し症状の改善を認めたが,低アルブミン血症が増悪し,アルブミン製剤の頻回投与が必要であった.小腸内視鏡検査や蛋白漏出シンチグラムなどから小腸からの蛋白漏出胃腸症と診断し,小腸中央部から上行結腸の約200cmの腸管を切除した.正常粘膜の脱落を広範囲に認め,白苔が付着し円状潰瘍が多発していた.術後は血清アルブミン値の改善を認めた.上腸間膜動脈閉塞症は重篤な腸管壊死を伴い致命的になることも少なくないが保存的に治療しうることもある.保存的治療後に蛋白漏出胃腸症を併発することはまれで,本邦3例目である.自験例の原因は粘膜のみの壊死と考えられ,緊急での大量腸管切除は回避できたが,蛋白漏出胃腸症の併発により結果的に腸管切除せざるをえなかった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.71.3103