非定型胸腺カルチノイドの1例

症例は77歳,男性.前胸部痛を主訴に近医を受診した.胸部レントゲンで異常陰影を指摘され,当院を紹介され受診した.胸部CT上,前縦隔に8cm大の腫瘤陰影を認め,FDG-PETでも同部位に集積を認めた.CTガイド下針生検により,非定型胸腺カルチノイドと診断された.術前精査の結果,リンパ節転移や遠隔転移は認めなかったため,拡大胸腺摘除術とリンパ節郭清を行った.病理結果は,HE染色で腫瘍内の限局壊死と類器官構造を認め,核分裂像は10高倍視野で18個認めた.免疫染色ではchromogranin A,synaptophysin,NCAMが陽性であった.術後の追加治療は行わず,2年を経過した現在も無再発生存...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 765 - 769
Main Authors 柳田, 正志, 島田, 順一, 井伊, 庸弘, 伊藤, 和弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2010
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Summary:症例は77歳,男性.前胸部痛を主訴に近医を受診した.胸部レントゲンで異常陰影を指摘され,当院を紹介され受診した.胸部CT上,前縦隔に8cm大の腫瘤陰影を認め,FDG-PETでも同部位に集積を認めた.CTガイド下針生検により,非定型胸腺カルチノイドと診断された.術前精査の結果,リンパ節転移や遠隔転移は認めなかったため,拡大胸腺摘除術とリンパ節郭清を行った.病理結果は,HE染色で腫瘍内の限局壊死と類器官構造を認め,核分裂像は10高倍視野で18個認めた.免疫染色ではchromogranin A,synaptophysin,NCAMが陽性であった.術後の追加治療は行わず,2年を経過した現在も無再発生存中である.胸腺カルチノイドの確定診断は生検による組織採取以外になく,生検した場合でも確定診断がつくとは限らない.しかし,リンパ節転移の可能性もあるため,術前診断は可能な限り付けておくべきである.また,胸腺カルチノイドの補助診断や再発検索にFDG-PETは有用であると考えられた.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.24.765