首都圏居住者にみられた多包虫症の1例

1983年10月,首都圏在住の女性(35歳)が胆嚢がんの疑いで国立がんセンター病院に入院した.翌年2月開腹手術時,肝右葉に4個の腫瘤(直径≤40 mm)が発見され,周辺リンパ節とともに肝右葉を摘出した.病理組織検査により腫瘤はすべて多包虫嚢包と判明した.患者の夫は冷凍トラック運転手として約10年間,道東地域からの魚介類運送に従事し,患者の発病約1年前,北海道の路上で仔犬を拾って帰った.ほぼ同サイズの肝多包虫病巣が複数個存在したこと,患者が同時に多数の多包条虫卵を摂取するのは感染犬の糞便を介する場合が他の偶発的虫卵摂取よりはるかに多いと考えられることなどから,感染源はこの仔犬である可能性が大きい...

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Published in肝臓 Vol. 49; no. 11; pp. 501 - 505
Main Authors 土井, 陸雄, 川中, 正憲, 森嶋, 康之, 尾島, 英知, 山崎, 晋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2008
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Summary:1983年10月,首都圏在住の女性(35歳)が胆嚢がんの疑いで国立がんセンター病院に入院した.翌年2月開腹手術時,肝右葉に4個の腫瘤(直径≤40 mm)が発見され,周辺リンパ節とともに肝右葉を摘出した.病理組織検査により腫瘤はすべて多包虫嚢包と判明した.患者の夫は冷凍トラック運転手として約10年間,道東地域からの魚介類運送に従事し,患者の発病約1年前,北海道の路上で仔犬を拾って帰った.ほぼ同サイズの肝多包虫病巣が複数個存在したこと,患者が同時に多数の多包条虫卵を摂取するのは感染犬の糞便を介する場合が他の偶発的虫卵摂取よりはるかに多いと考えられることなどから,感染源はこの仔犬である可能性が大きいと思われた.しかし,仔犬が多包条虫に感染していた実証はなく,患者自身も2回北海道を旅行しているため,感染源を仔犬と特定することはできなかった.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.49.501