術後8年目に発症した乳癌直腸転移の1例

乳癌の直腸転移は稀である.今回われわれは術後8年目に発症した乳癌直腸転移の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は83歳,女性.約7年半前に左乳癌に対し胸筋温存乳房切除術を受けている.下腹部痛,排便異常を主訴に紹介医を受診し,直腸癌疑いにて当院紹介となった.大腸内視鏡検査で直腸に全周性の狭窄が見られたが生検ではGroup1の診断であった.注腸検査で同部位は約10cm長の狭小化した病変であり,胸腹部CTでは,右水腎症や縦隔リンパ節腫大も認められた.またMRI拡散強調画像では骨転移も認めた.確定診断は得られなかったが,根治的手術は不可能と判断し人工肛門造設術を施行した.約2カ月後に腫瘍...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 11; pp. 2813 - 2817
Main Authors 大熊, 利之, 阿部, 真也, 松本, 孝嗣, 本郷, 弘昭, 箕田, 誠司, 金光, 敬一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2008
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Summary:乳癌の直腸転移は稀である.今回われわれは術後8年目に発症した乳癌直腸転移の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は83歳,女性.約7年半前に左乳癌に対し胸筋温存乳房切除術を受けている.下腹部痛,排便異常を主訴に紹介医を受診し,直腸癌疑いにて当院紹介となった.大腸内視鏡検査で直腸に全周性の狭窄が見られたが生検ではGroup1の診断であった.注腸検査で同部位は約10cm長の狭小化した病変であり,胸腹部CTでは,右水腎症や縦隔リンパ節腫大も認められた.またMRI拡散強調画像では骨転移も認めた.確定診断は得られなかったが,根治的手術は不可能と判断し人工肛門造設術を施行した.約2カ月後に腫瘍が肛門周囲に露出したため生検を施行したところ,乳癌直腸転移との確定診断を得た.われわれが検索した範囲では乳癌直腸転移の本邦文献報告例は自験例が9例目であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.69.2813