2.日本の野兎病菌保有鳥獣の種名リスト(第50回日本衛生動物学会北日本支部大会講演要旨)

野兎病菌はヒトを含むさまざまな種類の動物に感染可能で, 自然環境内において吸血性節足動物を介して野生鳥獣の間に維持されている. 日本では, 野兎病症例の90%以上がノウサギとの接触によることから, ノウサギの保菌動物としての意義が強調されるあまり, その他の動物が関係した症例が発生した場合には, 確定診断が遅れて適切に治療されないこともありうる. そこで野兎病対応への資料として, 国内における鳥獣類の野兎病菌保有例の記録をあらためて収集整理した. 野兎病関連鳥獣のリストはこれまでの文献にも散見されるが, 今回は菌分離陽性例と野兎病確定症例の感染源となった動物を野兎病菌保有例とみなした. 野生動...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 55; no. 2; p. 131
Main Authors 渡辺, 百合子, 藤田, 博己
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 2004
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ISSN0424-7086
2185-5609
DOI10.7601/mez.55.131_2

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Summary:野兎病菌はヒトを含むさまざまな種類の動物に感染可能で, 自然環境内において吸血性節足動物を介して野生鳥獣の間に維持されている. 日本では, 野兎病症例の90%以上がノウサギとの接触によることから, ノウサギの保菌動物としての意義が強調されるあまり, その他の動物が関係した症例が発生した場合には, 確定診断が遅れて適切に治療されないこともありうる. そこで野兎病対応への資料として, 国内における鳥獣類の野兎病菌保有例の記録をあらためて収集整理した. 野兎病関連鳥獣のリストはこれまでの文献にも散見されるが, 今回は菌分離陽性例と野兎病確定症例の感染源となった動物を野兎病菌保有例とみなした. 野生動物では, 哺乳類がノウサギ(菌分離, 感染源), ユキウサギ(感染源), ニホンリス(感染源), ムササビ(感染源), ツキノワグマ(感染源), ヒミズ(菌分離)の6種, 鳥類がキジ(菌分離), ヤマドリ(菌分離, 感染源), カラス(種名不詳)(菌分離)の3種, また家畜類では, イヌ, ネコ, ニワトリの3種(感染源)となった. 地理的には北海道のユキウサギと九州のノウサギの例を除くと本州からの記録である. 野兎病はノウサギにのみ固執することなく, 冬種鳥獣からの感染も考慮して対応すべき疾患である.
ISSN:0424-7086
2185-5609
DOI:10.7601/mez.55.131_2