流行性肝炎の慢性化と肝細胞癌発生に関する疫学的研究

1951年 (昭和26年) 11月頃から1954年にかけて岡山県赤磐郡熊山町で416人の患者発生がみられた流行性肝炎 (熊山肝炎) は流行初期の1年あまりで13.98%の死亡者を出したが10年後の調査で慢性化出現率は24.6%であった.今回の研究では, 1991年 (流行後約40年) に実施された住民検診受診者720人に対し, 肝機能 (S-GOT, S-GPT) 検査と肝炎ウイルスマーカーの検討を行い, HCV抗体 (C100-3抗体) 陽性率13.6%と同郡の他の4地区に比較して有意に高率であることが分かった.また, HCV抗体陽性のHBs抗体陽性率は42.9%, 肝機能異常率は40.8%...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 67; no. 10; pp. 978 - 986
Main Authors 下村, 宏之, 東, 俊宏, 土井, 俊彦, 高橋, 美智子, 内藤, 紘彦, 山田, 剛太郎, 辻, 英之, 中川, 裕, 山本, 和秀, 辻, 孝夫, 水野, 元夫, 浮田, 実, 蓮井, 利実
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.10.1993
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.67.978

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Summary:1951年 (昭和26年) 11月頃から1954年にかけて岡山県赤磐郡熊山町で416人の患者発生がみられた流行性肝炎 (熊山肝炎) は流行初期の1年あまりで13.98%の死亡者を出したが10年後の調査で慢性化出現率は24.6%であった.今回の研究では, 1991年 (流行後約40年) に実施された住民検診受診者720人に対し, 肝機能 (S-GOT, S-GPT) 検査と肝炎ウイルスマーカーの検討を行い, HCV抗体 (C100-3抗体) 陽性率13.6%と同郡の他の4地区に比較して有意に高率であることが分かった.また, HCV抗体陽性のHBs抗体陽性率は42.9%, 肝機能異常率は40.8%, 肝機能異常者のHCV抗体陽性率は51.3%と高率であった.流行当時, 典型的な熊山肝炎と診断された29例についてIgG-HA抗体陽性率82.8%, HBs抗体陽性率41.4%, HCV抗体陽性率34.5%, 肝機能異常率10.3%であった.以上の成績から熊山町で過去に流行した肝炎はHAVにHCVないしはHBVが重複感染し, その病像が複雑になったものと推察された.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.67.978