ゲル内沈降反応と免疫電気泳動によるA, C及びG群溶血連鎖球菌の抗原分析について

溶連菌A, C及びG群の抗原性を解析することを目的として次の実験を行なつた.A群各型 (標準株, 野外株), C群 (保菌者由来株) 及びG群 (しよう紅熱患者由来株) から加熱処理またはトリプシン処理によつてワクチンを作成し, 家兎を免疫して抗血清を得, 一方菌体から酸加熱またはオートクレープ抽出により抗原を調製し, 微量ゲル内沈降反応, 免疫電気泳動を行ない, 各菌株の抗原性を解析した.実験結果は概略次のようであつた. 1. A群各型箘では, この群に共通する多糖体抗原と, 各型に特異的な蛋白質抗原 (M蛋白) が見出されたが, ゲル内沈降反応では, 前者は抗血清ウエルの近く, 後者はほぼ...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 47; no. 12; pp. 527 - 535
Main Authors 児玉, 博英, 岩崎, 正和, 久保田, 憲太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.12.1973
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Summary:溶連菌A, C及びG群の抗原性を解析することを目的として次の実験を行なつた.A群各型 (標準株, 野外株), C群 (保菌者由来株) 及びG群 (しよう紅熱患者由来株) から加熱処理またはトリプシン処理によつてワクチンを作成し, 家兎を免疫して抗血清を得, 一方菌体から酸加熱またはオートクレープ抽出により抗原を調製し, 微量ゲル内沈降反応, 免疫電気泳動を行ない, 各菌株の抗原性を解析した.実験結果は概略次のようであつた. 1. A群各型箘では, この群に共通する多糖体抗原と, 各型に特異的な蛋白質抗原 (M蛋白) が見出されたが, ゲル内沈降反応では, 前者は抗血清ウエルの近く, 後者はほぼ中間に沈降線を形成した.12型菌について免疫電気泳動を行なうと, 上述の多糖体抗原は陰極側に, 蛋白質抗原はやや陽極側に泳動した. 2. C及びG群菌にも, 当然各群に特異的で, それぞれの群内では総ての菌株に共通な多糖体抗原があり, それらはゲル内沈降反応において, A群多糖体同様, 抗血清ウェルの近くに沈降線を形成し, 免疫電気泳動では陰極側に泳動した. 3. C及びG群菌においても, ゲル内沈降反応及び免疫電気泳動において, A群の型特異蛋白質に相当する位置に明瞭な沈降線が認められ, これらはトリプシン処理菌免疫血清では認められないことかから, A群のM蛋白同様, 耐熱性蛋白質抗原と考えられる.これらの沈降線は, 免疫に用いたC及びG群菌ばかりでなく, それぞれの標準株から作成した抗原とも総て融合し, 供試したC及びG群菌の総てがこの耐熱性蛋白質抗原を共有していることが判明したが, A群12型菌をはじめ, 多くのA群菌M蛋白とは抗原的に無関係であつた. 4. 上述の群特異的多糖体抗原及びC, Gに共通な耐熱性蛋白質抗原のほかに, 免疫に用いたC及びG群の菌株にのみそれぞれ特異的で同群の標準株には認められない抗原の存在が確認された, この抗原はトリプシン処理により免疫原性を失わないので, 株特異的な多糖体性抗原ではないかと思われるが, ゲル内沈降反応では最も抗原ウエルの近くに沈降線を形成し, 免疫電気泳動では殆ど原点にとどまつていた. 5. 菌体からの抗原抽出法に関しては, A群菌の型特異的蛋白質抗原を問題にする場合は, 酸加熱抽出抗原の方がオートクレープ抽出抗原よりも反応が鮮明でやや優れているようであつた.しかしながら, A, C及びG各群に特異的な多糖体抗原, 更には免疫に用いたC及びG群各菌株に特異的な多糖体性抗原の解析に関しては, オートクレープ抽出抗原の方が反応は明瞭であり, 特にG群菌においては, 酸加熱抽出抗原では, 抗原過剰から, 全く反応が見られない場合があり, オートクレープ抽出抗原を用いることが必須であった.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.47.527